段階を踏まない成長を遂げた愛は大成しない

「・・・確かにそう聞いた上で色々思い返すと、彼の幼さというのが相当だったと私も思うわ。というよりそもそも自分の手で組織を捕まえたいし元の体に戻りたいという気持ちから行動していったこと自体、自分がやらなきゃ気が済まないって事からの子どもっぽい気持ちからという以外の何物でもないもの」
「それは・・・」
「それに人は成功体験を忘れられない生き物だと真希波さんは言ったけど、彼の場合はそういった意味で自分が成功し続けてきたから尚更に自分はこのままでいいというような考えを変えられないのだと思うわ。組織と初めて遭遇した際にあんな体になったことは結果として奴らを捕まえるためのきっかけとなったんだというよう、言葉にはしないけれどどこかで都合良く感じていて、毛利さんの事も結果的に組織との事があって最終的に結ばれたんだからこれで良かったというようにね」
「っ・・・!」
志保もそのやり取りにいかに新一が子どもっぽいかもだが成功体験の事についてを持ち出し、どう感じているのかについての言葉を口にしていくと蘭は辛そうながらも否定の言葉を返せなかった。新一ならそのように考えてる方が妥当だろうというように感じた為に。
「・・・取り敢えず蘭さんはしばらくゆっくりどうするか考えるようにした方がいいよ。この事に関しては焦って結論を出してもあまりいいことになりそうにないってマリさんも言ってたから、すぐに結論は出さないようにしてじっくり考えた方がいい」
「・・・うん、そうする・・・」
そんな蘭に世良がもう話はここまでというようゆっくり後は考えるようにと切り出し、蘭は最早力無く頷く以外になかった。もうどうにもならないと匙を投げ出すかのよう・・・


















・・・そうして世良と志保は辛そうだから家まで付き添うと言って蘭を送るのだが、そこで世良は少し真剣に話したいからと志保の住む阿笠邸の部屋で話が出来ないかと切り出し、志保が頷いた事で二人は共に阿笠邸に向かい阿笠には部屋に入らないようにと言って二人きりで向き合う形を取った。



「・・・ねぇ志保さん。どうした方が二人はいいと思う?」
「・・・工藤君が心変わりしない限り二人の関係の改善は出来ないでしょうけど、それが難しいのは世良さんも承知しているはずよ。だから私としてはある程度試しの機会を取った上で工藤君が変わらないなら、それを理由に二人を別れさせる方に話を進ませるべきだと思うわ。主に工藤君を納得させるためと言うか、こういう理由があるんだと突き付けて無理矢理にでも頷かせる為にもね」
「あぁ・・・納得はしないにしても、理由があるというようにすれば新一君も少しはマシになるかもしれないというようにするってことね・・・」
・・・そうして二人になった場で世良がまずそちらはというように問い掛けを向けると、志保がもう新一に対して信頼など出来ようもないからこその処置を取るべきといった返しをしてきたことに、疲れたように納得する。どうせすんなりとは行かないのは自分も分かっているというよう。
「貴女もそういったことになると考えているのは分かるけど、それならどうしてこんな形で話したいと言ってきたのかしら?」
「ちょっとさっきまでの話についてをもうちょっと深掘りしたいっていうのと、蘭さんがいない内に話した方がいいことを話したいと思ったんだよ。まだ新一君への気持ちが変わらない蘭さんにするには少し酷な話をね」
ただそんな反応に何でこんな形を取ったのかと志保は聞くのだが、世良は主に蘭への気遣いだと返す。酷な事を聞かせないためだと。









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