領域を踏み荒らす者に渡す報い

「・・・大丈夫だろうか、毛利さんは・・・」
「自殺を考えるほどに追い込まれているような念は感じなかった。どっちかと言えば困惑に近い感情だったから・・・多分どうにか自分の中にある感情だとか考えをまとめたいって考えているんだろう。一先ず悪い意味で思い切ったような行動を取る心配はないはずだ」
「・・・表情から何かを判断することまでは出来ても、俺はそこまでは読みきれないからな・・・自殺するほど思い詰めてないと言うのは聞けて少しホッとするな」
・・・それで小五郎の元から離れた二人は近くの公園に寄ってベンチに横並びに座り、ルルーシュの心配にカミーユの感覚からの言葉に安心したように息を吐く。
「なぁルルーシュ・・・新一の両親の反応は流石に予想外だったんじゃないのか?いくら新一が引く気はないって態度で見せたからってのがあってもだ」
「・・・それに関しては素直に認める。まさか息子が話を聞くだけでも普通では有り得ない事態になったというのに、そうさせたいだなどと言うとは思わなかった・・・それもあの話の感じからして毛利さんに新一を預かってもらうだけもらって、自分達は別段新一を身近でサポートしようという気持ちも無かったように感じ取れる話し方だった・・・悪い人達ではないのは前に会ったことがあるから分かってはいるが、自分達の都合を優先させて息子一人を住む場所に金だけを与えて放置出来るその神経を計算していなかったのは俺のミスだったな・・・」
そんなルルーシュに新一の両親についてを聞くと、計算外だったと素直に漏らして頭に手を当てる。






・・・新一の両親とは二人も何度か会ったことはあるが、ルルーシュが言ったように悪い人物達ではないという印象は確かにある。しかしそれ以上に感じていたのは浮世離れしている、と言った物であった。

ルルーシュとカミーユの両親に比べれば新一の両親はまだ善人であり新一に対する愛情があるとは見てはいるが、まだ成人していない子どもがしっかりしているだとか自分達に付いていきたくないと言っていたから・・・だとかの理由で子ども一人を金だけやって家に置き、自分達は遠い海外の異国の地でバカンス染みたような形で仕事を行うなどと普通の親では到底有り得ない行動だ。

それを当然の物とした理由は父親の優作が世界的にも売れっ子な小説家であり、海外で暮らすのにも新一にある程度の金を与えても不足など全くない資金があったからだがそういった自分のやりたいようにやる・・・そう、子どもと共にいなくてもいいなどという奔放な姿勢が浮世離れしていると感じ取れた理由だ。そして親が親なら子も子とばかりに、新一もその親の素質を引き継いだ事もまた問題だった。

・・・子の強い気持ちを親が汲み取る。こう言葉尻だけで聞くならなんともいい話のように思えるかもしれないが、二人に小五郎の立場からすれば自分達の思う通りにしたいからお前達も協力してくれと親子から共々言われるような物だ。百歩譲って新一は自分がやられたんだからという気持ちになるから躍起になるのは分かるにしても、親の立場からすれば子どもが危険に関わるけれど親の自分達の代わりに近くにいてやってくれという人任せ以外の何物でもない頼みだ。

そんなことを頼めるような神経などまず有り得る物ではないし、有り得てはいけない物なのだ。しかしそれを息子が望んだからでその助けに両親はなろうとした・・・そんな人からズレた感覚の神経を持っていると、今更ながらにルルーシュは思い出したのだ。普通の親なら子ども大事さに何らかのアクションを起こすはずなのに、それを起こさない新一の両親のズレを。









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