過去を過去とすべきか否か 後編

「・・・貴方がそういったようになるのは辞めていったジオンの兵士の人達のよう、手段が目的になっていったことが理由なんだと思います。かつては家族に自分の為にと復讐の戦いに身を投じるというように行動したのにどんどんと目的が変わっていき、次第に目的の為に戦うという手段に貴方は酔うようになっていった・・・かつての父ジオンの元に召されるだろうという言葉が演説を締め括る為の演出の物だったかどうかは分かりませんが、どちらにせよ前世より断然に平和なこの世界で穏やかになっていて健在の筈の家族と共にいれるのに、それを喜べない気持ちの方が大きいと言えるくらいに」
「っ!」
「・・・そんな風に貴方がなってしまったのは貴方だけの責任ではないとはさっき僕の言ったような事から考えてはいます。ですが戦わずにいて色々と考えを改める為の時間もあった筈なのに、貴方はずっと悶々とした時間を過ごしていった・・・そしてこうして生まれ変わったのに求めるものはかつての面影ばかりで、平和という物にいつまでも馴染めないし変わりもしようとしないままに戦いや人殺しをしたいと願う・・・僕達は貴方にそんな事をしてほしいと思っていませんでしたし、前に僕が貴方に『シャア=アズナブル』に戻らなければならないと言ったのは、そうしてほしかったからなんて訳じゃないんですよ・・・」
「っ・・・!」
・・・最初こそは責めるような事を言っていったが、次第に自分も辛いというように悲痛に表情を歪めながら声を漏らしていくカミーユに、シャアもまた苦痛そうに表情を歪めるしか無かった。本心からカミーユは人々の為にシャアに決起してほしいと願った上でシャアを信じていたのに、それを最悪の形で裏切ってしまった事・・・それは時が経ってもカミーユの中では悲しみとなって残っているのだと強く感じて。
「・・・もういいだろう、シャア。仮に貴様が私やカミーユとまた共にというようにとなったところで、私もカミーユももうこの世界で戦いとは無縁の平和な生を全うしたいと思っている。だからもう貴様の過去への妄執に私達を巻き込まないでくれ」
「ハマーン・・・なら私はどうすればいいというのだ・・・?」
「・・・こうして私達がこの世界で生きているのだ。もしかしたならアムロ=レイもそうだがララァ=スンもこの世界の何処かで記憶を持ちながら暮らしているかもしれん。ただアムロ=レイに関してはいたとしてもどちらの世界のかは分からんが、どちらであるにせよその後の貴様の体たらくに私達との話を聞かせれば確実に貴様に失望するだろうし、流石に私もそんなことになるだろう人物を探して会えばいいと言う気にはならんが・・・ララァ=スンなら貴様の事を慰めるなりなんなりしてくれる可能性は無いとは言わんだろうから、探してみたらどうだ?」
「っ・・・ララァも、この世界にいるかもしれないのか・・・」
そんなカミーユを見かねてハマーンがもういいだろうと言うとすがるようにシャアは漏らすが、ララァの存在もある可能性を口にした瞬間に希望を見付けたとばかりの顔に一瞬眉を寄せるが、すぐに戻してカミーユに視線を向けながら立ち上がる。
「では行くぞカミーユ」
「・・・はい、行きましょう」
それで行こうと口にするハマーンにカミーユも何かを察したというように立ち上がり、互いに自分の分の飲み物の゙代金を取り出してテーブルに置いて場を後にしていった。何かを言いたげだが二人を止める事を出来ないシャアを残す形で・・・










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