過去を過去とすべきか否か 後編

「・・・思う所をカミーユの姿や発言に感じているのは分かるが、貴様が地球を潰すと選択して行動を起こしたこと自体は貴様の責任でしかない。私から言われるのは気に食わんだろうが、それが間違いではないことは否定出来んだろう。シャア」
「っ・・・分かっている・・・私が選んだことだとは・・・」
だがそこでハマーンが勘違いするなとばかりに鋭い視線と言葉を向けると、シャアもすぐに苦い顔で肯定するしかなかった・・・苦しむ姿を見せたカミーユを慰める事も言い訳も許されないことも自分はしたのだと突き付けられて。
「ならいいがここで最初の方に話を戻そう・・・話に聞いたような形で生涯を閉じた貴様が何故私を見付けて決して逃すまいとした理由についてをな」
「・・・そこか・・・」
「・・・確かにそこについては聞いていませんでしたね」
その返事に納得しつつそもそもの発端になった自分を逃さなかった理由についてを聞くハマーンに、シャアもだがカミーユも言葉にされていなかったと思い返す。
「・・・知っている者を見付けられたことに嬉しさを感じたのだ」
「・・・嬉しさ?」
「・・・この世界に生まれ変わった私だが、最初はどうしていいものか分からずにいた。父に母はこの世界だからか殺されることもなく存在し、アルテイシアも同じように妹として生まれてきて以前と比べるまでもなく平和な家族としての時間を過ごしてきたが、どうにも気分が落ち着くことはなかった・・・何も知らぬままに接してくるからこそただ優しく穏やかな皆の様子に・・・」
「・・・何も家族は知らんからこそ違和感を覚えるというのは私も経験しているが、先程貴様は仕事で日本に来たと言っていたがもう親元は離れたのか?」
「いや、父が社長を務める会社の社員として働いている・・・学生の頃は親元を離れて生活していたが、就職という段になってもどうにもやる気が起きぬとなっていた時に父からウチで働けばいいと言われてそうすることにしたのだ。取り立ててやりたいことも考えられていなかった事から、もうそれでいいとな・・・そうして父の会社で働くことになって一見すれば順調に活動はしていた上で家族との仲もいいと言えるものであり、心の中ではこういった事を望んでいたという考えもあったがそれ以上に私の心中を大きく占めていたのは、何か違うというような気持ちばかりだったのだ・・・」
それでシャアが話をしていく中で今生での家族についてを話していき、所々挟まるハマーンの声に答えつつも辛いというように目を伏せる。幸せである筈なのに違うと感じていると。
「・・・多分貴方がハマーンさんに望んでいたことはそんな自分の状況を打破するきっかけじゃないんですか?今の話から貴方が何を望むかと言ったらそんな状況が変わる何かだと思いますが・・・」
「・・・だからといってよりにもよって私にこだわるものか?目ぼしい誰かを他に見つけられなかったとは言え、かつての関係を考えれば私と顔を合わせる事すら拒否するのがこの男からすれば当然だと思うが・・・」
「この人からすればきっかけをもたらしてくれるなら誰でも良かったんじゃないかと思います。それこそ貴女でなくともアムロさんにシロッコやザビ家の誰かであったりといった、因縁のある相手なら誰でも・・・というかむしろそういった因縁があった方が喜ばしかったんじゃないかとすら思えるんです。そういった相手と対峙の形を取るなりしたなら、かつてのように自分は戻れるのではないかというよう」
「・・・成程。要はこの男は前世を振り切ってはいないどころか、むしろしがみついているのか。それも戦争を終わらせた後の世界についてではなく、戦争をしていた時の世界に」
「だと思いますが・・・」
「っ・・・」
「・・・反応から見て少なからず間違ってはなさそうですね」
そんな反応にカミーユがその本質はこうではないかと推測していって、ハマーンも呆れながら納得といった様子を浮かべてから二人が視線を向けると否定出来ないというように口を歪ませる姿に、合っていることを確認して首を横に振る。









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