過去を過去とすべきか否か 後編

「・・・多分ハマーンさんも感じてると思いますが、敢えて僕から言わせてもらいます・・・完全に貴方、組織だって動いているじゃないですか。そう決めたのは自分の意志だみたいに言えるつもりなのかもしれませんが、その周りの人の意見なんか関係無いみたいな様子なんか全くあったとは思えませんよ」
「分かっている・・・事実私はハマーンに敗れた直後はその者達に気を遣われる形で表に出ることなく療養していたが、次第にその者達と話をしていく内にエゥーゴに戻って立て直しを図ってネオジオンに立ち向かうより、私がネオジオンの総帥に立たねばならんと感じるようになった・・・いや、今となってはそうなるべきと乗せられてしまったと感じるのだ。彼らの為にも自分が動き、連邦や地球に住む者達を粛清せねばならんというよう・・・」
「・・・僕達の話からそういった風に考えてしまったことに自己嫌悪の気持ちが浮かんでいるのかもしれませんが、何度も言ったようにもっともらしい事を選べるからこそその平行世界の貴方は地球を救う側に回れたんですよ」
「・・・何?」
ただいつまでも黙っていられないとカミーユが目を開けてそれまでの発言から感じたことを言うと、シャアは分かりやすく気落ちしたように漏らすがだからこその平行世界な結果と返され訝しげに眉を寄せる。
「言ってしまえば良くも悪くも貴方はその時にこれが最も見栄えがいいと一番と思えるような選択を取る人だということです。ザビ家に復讐を決めたことに関しては貴方自身で考えたことだから除外するにしても、エゥーゴでの貴方はハマーンさんに対する姿勢は一貫していて死ぬことも承知の上で抵抗することを選び、地球を潰すと決めた貴方は貴方を擁立しようという気持ちを持っていた人達の立場だったり考えを汲み取ってそうすると決め、地球を救うと決めた貴方は僕やアムロさんや他の人達からどう思われようとも悪役を演じて泥を被ったというように聞きました・・・そういったことを考えていった結果、貴方は与えられた選択肢の中で一番自分にとって正しいと思える物を選ぶ人だと僕達は考えるようになると共に・・・惜しむらくは平行世界の貴方のように地球を救う側に回るような選択肢が貴方には無かったから、貴方は地球を潰すことが最善だと選んだんですよ。それが自分がもっともらしいと思える選択だと思ってね」
「っ・・・!」
そこからいかに自分達がシャアについてを考えていったかに、地球を潰す事を選べたのか・・・それらをまとめ上げたカミーユの言葉にシャアは苦しそうな顔になりながらも、明確な否定の言葉が出てこなかった。選択肢が他に無かったからアクシズ落としを選んだだけなのだと言われても。






・・・シャアはかつて一年戦争の終わり際にて、当時乳児程度だったミネバを除いて最後の生き残りであったキシリアを自らの手で殺したことにより、ザビ家への復讐を終わらせた。だがそうして親達の仇と呼べる者達を殺したにも関わらず尚ジオンに残ったのは自分から望んでというのではなく、状況的にジオン軍と共に逃げ出さなければ生き残れない可能性が高かったから仕方無くという部分からであった。戦争の激しさから単独で逃げるなどまず出来るはずもないということから。

故に残存のジオン戦力と共にシャアはアクシズまで逃げることになるのだが、そこで状況が落ち着くまでアクシズにいる方が安全という事もあってアクシズから出ることなく過ごしていくことになり、大佐という地位や数々の戦功もあってすぐにその存在はアクシズ内でも大きな物となって、気付けばシャアは人知れず姿を消す事は出来なくなりそのまま活動することになるのだが・・・アクシズを離れて連邦に入り込むという任を受けるかどうかという時から、他者も巻き込む程の大きな選択をする事が増えていったのである。そしてそうした時はカミーユ達が言ったよう、シャアにとってもっともらしい選択を取っていった。









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