領域を踏み荒らす者に渡す報い

「・・・取りあえずはこれで以上だ」
「・・・あの、毛利さん・・・こうすることを切り出した僕達がこんなことを言い出すのは変かもしれないですけれど、本当に良かったんですか?これで新一もそうですけど、これから工藤夫妻に会うことになると色々と複雑になると思うんですが・・・」
そしてこれで終わりと言う小五郎に、カミーユが心配そうに声をかける・・・もしこれから先に新一がどうなるか分からないにしても、そういった状況になったからには工藤一家と会いにくくなるのではないかと。
「・・・確かに優作さん達と顔を合わせにくくなったのは事実じゃある。けれど俺はこれで良かったと思ってる・・・別にあの人達の事が嫌いになったとかって訳じゃねぇが、だからと言って嫌いじゃねぇなら何でも許していいだとかそういう訳じゃねぇ・・・お前らから新一を置くことがどれだけ危険かって聞いたこともあるが、あの新一の勝手さを見た上で話してそれを許したくねぇって思ったんだよ・・・」
「許したくない、ですか?」
「・・・あいつはあいつなりに俺らを巻き込みたくねぇからとかそういった気持ちだったりはあったんだろう。けど自分がそうしたいからで一人で勝手に行動して、それを認めるなんて普通有り得ちゃなんねぇことだ・・・けどそれを当たり前のように優作さん達は認めようとしちまってた。人を頼りにしねぇのに、人を利用する・・・そんなのは人としてやっちゃいけねぇことの筈だが、それをあいつに優作さん達は深く考えてねぇようにしか思えなかった。だからこそそんな勝手な新一を許して協力なんざ出来ねぇって思ったんだよ。それを許しちまったらまた同じような事が起きたら同じことをすればいいって、人に平気でそんなことを求めるような人間になると思ってな・・・」
「成程・・・」
・・・人の親として、知り合いとは言え他人の子どもにまで気をかける小五郎の厳しくも正しさを願う苦さを伴った言葉に、カミーユもそうだがルルーシュも余計な言葉無しに納得して頷いた。確かにこれだけの勝手を許すと言うことはあまり人として良くないことだと。
「・・・ただ顔を合わせにくいとは言いはしたが、もうあいつも含めて優作さん達の所との交流はする気になれねぇな・・・新一が元に戻れたとしてその男達をどうにか全員捕まえたとしても、俺と優作さん達との意識の違いをまざまざと感じちまった・・・それなのに全部終わったからさぁまた前のようになんて言われたって、今の俺にはそんなことが出来る気はしねぇし・・・何より、蘭ともし結婚なんて事になるなんてあんまり考えたくもねぇ・・・」
「・・・毛利さんはそうは言いますけど、蘭は余程の事がない限り新一と別れるのを選ばないと思いますよ。あまり聞きたくないと思いますけど・・・」
「分かってる・・・ただもしその時が来たなら、俺は反対するんだろうな・・・よくある父親として娘をやりたくないって気持ちからとかってのもあるだろうが、そんな新一達と繋がりが出来るって考えてな・・・」
「「・・・」」
・・・分かってることではあるが、分かりたくないことでもある。そんな葛藤の滲む小五郎の表情に、二人も黙るしかなかった。新一と蘭は新一の問題さえ解決すれば結ばれる事になる可能性が高いとは予測はしているが、だからこそ今の小五郎からすれば嫌な気持ちにしかならない物であるために。
「・・・色々済まなかったな、二人とも。お前らのおかげで新一を何も知らねぇままに置かずに済んだ」
「・・・すみませんでした。俺達だけでどうにかしようかと思ったんですが、色々と無理があって・・・」
「それはいいっこなしだ。確かにキツい部分はあったが、それでも何も知らねぇままいるよりは全然マシだ・・・ただ、今日は夜は一人にしてくれ・・・少し時間が欲しいんだ、一人になる時間が・・・」
「・・・分かりました。カミーユもそれでいいな?」
「あぁ・・・また明日来ます、毛利さん・・・」
そんな小五郎は礼を言った後に一人になりたいと言い出し、ルルーシュとカミーユは深く頷いた後にその場を後にしていく。複雑そうな表情のまま寝室の方に向かう小五郎の姿を見た後に・・・









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