過去を過去とすべきか否か 前編

「・・・当時の僕はもう体の具合もあってエゥーゴを離れていた事から、メディアが発表する事くらいしか目や耳にすることは出来ませんでしたが、それでもそれらの行動についてはどのメディアも報道していました。ただそれはある意味当然と言えば当然だと思います・・・フィフス・ルナを落としたことによりネオジオンに大尉の活動は大いに宣伝されると共に、その後で奪われたとされるアクシズを核を搭載する形で地球に落とすという前代未聞の事件をどこも伝えないなんて、メディアとしては有り得ないと思いますから」
「・・・シャアが、そんなことを・・・」
「ただそうしてアクシズが地球に落ちる前にサイコミュの物と思われる緑の光がアクシズを包み、そこから大気圏を離れて地球圏から離れていく映像がメディアから流されていったんですが・・・その中でシャア=アズナブルもそうですがアムロ=レイのMIAが発表されたことを知り、僕はアムロさんが大尉との決着を着けると共にアクシズを地球の外に押し出したのだと見たんです。それこそ自分の命と引き換えに・・・そして以降はもう二人の名前も姿も表に出て来る事が無かったことで、二人はその時にもう死んだというのは間違いないだろうと確信しました」
「・・・そう、か・・・そんな風にアムロ=レイとシャアはなったというのか・・・」
そして自分の当時の立場の視点で語るカミーユの言葉に、ハマーンは沈痛な面持ちで受け止める以外になかった。予想だにしなかった話とその結末だが、カミーユが嘘を言っている訳ではないと分かったために。
「・・・あの人はネオジオンの総帥として演説する際に言っていました。ザビ家であったりティターンズであったりにもですが、貴女に対してもザビ家やジオンはハマーンの跳梁となったというような厳しい言葉を」
「っ、それは・・・」
「対外的にザビ家や貴女やグレミーの率いていたジオンと違うというように示したいという気持ちもあったとは思います。演説の最後を父ジオンの元に召されるだろうというように締め括ったのもあり、ザビ家の統治していたジオンとは違うのだというよう・・・でも貴女も感じていると思いますし、僕もダカールでの演説もあったからその演説で感じたんです。全てが全てを本心から話している訳では無いし人の心を惹きつける為にパフォーマンスとして演じている部分はあったにしても、言うべきことを言わずに終わるような事はしない・・・そして貴女と向き合った時の様子を考えたら、他の事を含めて本音で話していたのだろうと」
「っ・・・!」
だがカミーユは更に自分でも酷な事を言うというのは分かっているというよう、かつてのシャアの演説の事を自分の視点から話していく中でハマーンを心底から受け付けていなかったのだろう・・・と話していき、ハマーンは苦々しく歯を噛み締めてしまった。言っている事を理解出来るし、否定出来ないというよう。
「・・・貴女にとって辛いことを言っている事には申し訳無いという気持ちはあります。ですがあの人がシャア=アズナブルとして決起してそんな形でネオジオンを率いてアムロさんと共にMIAになった後、ネオジオンはハッキリと衰退していくことになったことも含めて話さなければならないと思ったんです・・・それだけの事をしたからこそもうジオンは残党が度々動いたといった報道が出るくらいになって、それがあの人により決定打になったことを理解してもらうと共に・・・あの人に対する気持ちが残っているならこの話で吹っ切ってもらいたいと」
「・・・そういうことか。だが確かにそう聞けて吹っ切るという意味では悪くはなかったよ。今だからこそ正直に言うなら私もシャアを殺したと思っていたことに関して、少なからず思うところはあったが・・・そうして生きていて大衆を惹きつける為に私を死体を蹴るような形でこき下ろしたと聞けたことで、シャアと対等になったとは言わないにしてももうシャアに対して思う物など無くしていいのだとな」
カミーユはそんなハマーンに謝罪しつつもその話をした意図についてを話すと、理解したというように微笑を浮かべた。カミーユなりにシャアへの気持ちをどうにかしてほしいと敢えて厳しい事を言ったのだと。









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