教師は聖人ではなく教師というだけである

「・・・ほ、本当にそれだけ酷い内容なのかよ・・・俺が何か先生に距離を取られるようになったことについてはさ・・・」
「あぁ、間違いじゃねぇよ。その時のやり取りを録音したレコーダーって証拠もあるが、俺自身鬼塚先生と話しててお前の事を教師達が心地良くないって思う理由ってヤツを理解しちまったんだ。そりゃそう思うのも当然だろってな」
「っ・・・!」
だが一人新一はまだ信じたくないといったようにすがる声を向けるのだが、小五郎がむしろ同意を示せるような物だったというように返した事に盛大に息を呑んだ。教師達が自分に気持ち良くないという考えを抱いているというのは事実だとのことに。






・・・そもそも工藤家の三人もそうだが、新一から話を受けた蘭の言葉もあって小五郎が何をしたのかということに関してだが、これは新一が帝丹高校に復学して以降で教師達から明らかに以前より良くない目や感情を向けられるのを感じ取った事から、その理由を知りたかった新一だが流石に何で自分にそんな態度を取っているのかと直接聞けるほどには面の皮は厚くないこともあるが、何よりそんな態度と共に新一との距離を取って最低限の接触のみにしていることから、自分ではどうにもならないから別方面からどうにかしてほしいと小五郎に頼み込んだ結果なのである。

ただ元々からの新一の性格なら分からない事は自分で調べるだとか推理すると意地になっていただろうはずが、そんな形にすることにしたのは・・・新一自身その理由が出来るならハッキリして欲しくないといった気持ちがうっすらとあったからであった。自分に対する害意がある上で攻撃してくるならそれも含めて対処するという自信や気持ちはあるが、教師達が向けて来るのはそういった害意や攻撃の意志ではなく単純に気に入らない相手を視界にも入れたくもないし、話もしたくないといった遠巻きに相手をすることすら嫌だという直接的な攻撃はないが、ハッキリ自分が関わってくることに対する拒絶だけを向けてきてくる事に・・・ただ嫌われているだけなのではという事を自分の手ではハッキリさせたくなかったのだ。

この辺りは人に憎まれ攻撃される事に慣れてはいるが、嫌われるだけなんて事に慣れてもいないしどう対処していいかも分からないからだ。それに新一自身理由とか心当たりもないことに加えて、いくらなんでも新一が聞いたからと言っても良くない感情を持っている可能性の高い教師達とは言え、こういうわけだからお前を好ましく思っていない・・・なんて馬鹿正直に言うような事なんか有り得るはずが無い。

そう思ったからどうしようかと考えたのだが、そこで新一が突破口として見出した存在が鬼塚という今年入ってきた先生であり、とてもまともな教師とは思えない存在だった・・・教師らしさなんて全く無い茶に染めた髪とピアスを付けた上で、性格も大人としてとても落ち着いた様子なんか一切見せることもないどころか、頭の良さも下手をすれば在校生の方がいいのではないかというようなエピソードも休学中に度々聞いてきた。

正直こんな人物が教師としていて大丈夫なのかと思わずにはいられなかった新一だが、蘭から鬼塚についてを度々聞いていくと生徒達からの評価は他の先生と比べても段違いにいいというものだった事に、何でだという気持ちを最初は抱いていたが・・・次第に好かれるようになったエピソードを聞いていって、そういうことなのかと理解していった。確かに先生としての頭は足りないのかもしれないが、その頭の足りなさから来るといったような子どもっぽさから来る気安い関係になれる空気だったりが、生徒達からして心地良いのだろうと。

現に生徒達でギクシャクしているといったような関係になっていたのが、鬼塚が関係したことによりそれらが解決したといったエピソードもいくつもあったとその普通の先生では有り得ない破天荒さも含めて蘭から聞かされ、それは人気が出るのは確かだろうと新一も思ったのだ。普通の大人や教師なら突っ込まないような所に行けるその気質だったり性格ややり方にだ。

だがそんな鬼塚はいい面も見当たるが悪い面も同時に見られることが多く、その悪い面を新一は利用しようと考えて小五郎に頼もうと考えたのだ・・・調子に乗ると口が滑りやすい上に金もない鬼塚なら、適当に酔わせて口を滑らせるようにすれば何があったのか聞けるのではないかと。









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