曇りを晴らした先に道化の探偵は覚醒する

「それで部屋に戻る前に改めて確認させてもらうが・・・もう工藤家とやらに関して未練やらは一切ないのだな?」
「そこに関しては改めて言わせてもらいますが、もう全くありません。むしろ優作さんや新一に憧れていたということを間違っていたとすら思っています」
そうしてから改めての確認だと未練についてを問い掛ける叔父に対し、小五郎はいっそ晴れ晴れとしているとばかりの笑顔でないと言い切る。憧れを持っていたことを間違いと言い切る形で。






・・・小五郎が探偵になったのは様々に理由があるが、その中には優作のように事件が起きてもアッサリそれらを解決していくその姿を見たことから、自分もあのように事件解決をしたいという憧れもあったからであった。ただそういったように探偵になりはしたが現実はそうはならず、挙げ句の果てにはその優作の子どもであり蘭と同じ年齢の新一にすら推理で勝てないという始末だった。

ただそれでも小五郎からすれば決して優作もだが新一を恨むだとかの負の念などは持っていなかったし、何なら新一の事を認めて探偵としてのヒーローの姿に憧れてもいた。ただそれでもそんな姿はまだまだ新一は子どもであることから見せて来なかったし、近くの大人としてちゃんと見守るような形を取ってきたのだが・・・そういった気持ちを根底から失わせてしまったのが、新一を小五郎が利用してきたことについてだ。

阿笠から事実を聞くまでは新一と優作の二人もだが、有希子にも信頼を置いていた。工藤家の面々の人格について善人だと思っていたし、何かあっても持ち前の能力で余裕綽々で解決して何の面倒もかけることはしないと・・・だが阿笠が原因とは言え、新一を筆頭に小五郎達には何も言わないばかりか平気な顔で利用してきたのだ。それも組織が壊滅するまでの間で新一は全くそれらを話そうとすることなく、優作とは直接会うことはなかったが直接会った有希子は全く何も隠し事などないとばかりに笑顔を浮かべ、せめて裏では事実を知らせて新一の為にも知らないフリをしてほしいと持ち掛けてくる事すらなかったのだ。

・・・自分では頼りにならないだとか巻き込みたくなかっただったり、自分達でどうにかしたかったといった言い分はあるのだろう。だがそうした事を言うのならそもそも最初から自分達の元もであるが、最低でも米花町から離れるくらいの事はするべきだと小五郎は考えたのだ。特に一歩間違っていれば小五郎が死んでいた事に関してを考えれば、死ななかったから良しではなくそもそも新一が小五郎を探偵役に据えたからそうなったのだから、巻き込んでしまったとどう取り繕った所で確定した事と言っていいことだと小五郎からは言えた。

なのに新一は結果的に死ななかったんだから巻き込んでいないし、話す必要なんかなかったという態度を取っていたことは阿笠の話から分かっている上で・・・最も言いたくないと思っていただろう蘭には事実がバレた上で、蘭の性格的に様々に言われて押し切られた形になっただろう事を加味しても結局は巻き込んでしまった。結果は成功したとは言え組織との対決の際に蘭が死んでいた可能性もあったというのにだ。

そういった言動の一貫しない上に都合のいい部分だけしか見ない様子に小五郎は、もう新一や優作達を信じるといったような事などもう出来ないとしか思えなくなっていた上で、それまではまだ少しは残っていた敬愛や憧れの気持ちは完全に消え去ってしまっていた。最早新一達にそんな気持ちや考えは向けられないし、むしろそういったモノをかつては抱いていた事を無くしてしまいたいとすら思う形でだ。









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