曇りを晴らした先に道化の探偵は覚醒する

「・・・」
「も、毛利君・・・お、怒っとるのか・・・?」
「・・・怒りがねーとは言わねーが、それ以上に呆れの方が強いんだよ。あの人達からすれば新一が折れねーって思っただとか新一なら大丈夫だとかって考えたのかもしれねーが、あの人達は俺らに事情を話すこともなかったってのもそうだし、何より新一が近くにいるのを嫌がるからだろうとかってのもあるだろうけど、それでそのまま海外に戻るなんてのはいくらなんでも新一に対して無責任すぎゃしねーかって風にな」
「そ、それは・・・」
「優作さんには仕事がある?新一がそうしたいからってんで信じることにした?近くに優作さん達がいるのは新一が嫌がるだろうから近くにいないことにした?・・・こういった事から新一の考えを優先してやることを許すことのどこに、親として責任を果たしてるって言えるんだ?事情もろくに説明しねーでコナンを預かってもらう分の養育費だって名目の金を渡すだけ・・・これのどこに立派な親としての責任があるってんだ?なぁ、答えてくれよ博士」
「っ・・・!」
・・・そうして頭を抱えたまま黙る小五郎の沈黙に阿笠は耐えきれず怒りがあるのかと問うが、手をどけながら光を灯さない瞳と熱のない声からの問い返しの言葉に、たまらず阿笠は引きつらせたように息を呑むしかなかった。そこまで頻繁に小五郎と交流している訳では無い阿笠だが、それでも小五郎の普段の様子は知っているからこそ今までにない異様な様子を見て。
「・・・まぁその辺りについちゃ博士も似たりよったりってとこなんだろ。新一なら大丈夫だとか説得が出来ねーんだから仕方ねーし手助けしないといけないってことでそうしてるんだろうとでも思って、俺らに何も言わずに済ませようって思ったんだろうってな」
「そ、それは・・・」
「言い訳するな。そもそもあんたが誰にも言うなっつった上で俺のとこが都合がいいって言ったってことを考えりゃ、あんたが原因以外の何物でもねーじゃねーか。あぁして新一が『江戸川コナン』だなんてガキのフリしてのうのうと俺のとこに転がり込んできたのはよ」
「っ!」
だが更に続いた情など欠片もないとばかりの言葉に阿笠は顔を青くして言葉を盛大に詰まらせるしかなかった・・・小五郎の言葉通りそもそも新一が小五郎の元に転がり込んだのは他でもない阿笠が原因であるのだが、だからこそ小五郎がこうして今までにない底知れない状態になっているとも理解してしまった為に。
「・・・まぁそこに関しちゃ今更だ。重要なのはこれからだ」
「・・・こ、これから・・・?」
しかしそこで小五郎が一転してこれからと口にしたことに、恐る恐ると阿笠はオウム返しをする。
「そこに関してはそもそも俺としちゃ元々ここにこんな時間に来たのはコナンは何者なのかって事をわざわざ蘭に内緒で確かめに来たんだよ。あいつにも俺が気付いたことを話したら事情を知りたいって言うだろうと同時に、何でって感情的になってコナンに直接話をするって言って聞かなかっただろうって思ってな・・・そしてそれを言わないで良かったって風に博士の話から感じたんだよ。そんなことを蘭が聞いたら十中八九みたいなもんとかじゃなく、何で言わなかったのかって怒ってから自分もそこに関わるだとかって言って引きゃしねーだろうってな」
「そ、それは確かに否定出来ぬのぅ・・・蘭ちゃんの性格的に新一がそうしてたとなったら、自分もどうにかすると言い出すだろうことは・・・」
そこで小五郎は何故こういう形でここに来たのかの理由を蘭にあると詳しく述べていくと、複雑さを滲ませながらも阿笠も否定出来なかった。蘭の性格的にまず間違いなく過程はどうあれ、最終的には新一の為に動こうとするのは目に見えたと。









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