向けられ触れてこそ愛情は理解出来る

・・・かつて高校生探偵という肩書きと共に警察の救世主とも呼ばれていた工藤新一は結婚をした。幼馴染みであり恋人となった蘭と夫婦となる形でだ。そしてそんな二人は結果として二人の男児を授かる事になった。一人は父親と瓜二つと言っていい容姿を持って生まれたコナンと名付けられた男の子で、もう一人は一年後に生まれた悟と名付けられた子で新一にも蘭にもどちらにも寄っていない中庸な容姿を持った男の子だった。

そんな二人の子どもを授かった新一達は幸せを感じながら生活をしていたのだが、上の方の子どもであるコナンは成長していくにつれて父親である新一同様に探偵や推理に興味を持つようになっていった。それも物心ついてから小学生になる前の間というかつての新一を思わせる年齢からで、頭の出来も当時の新一と比べて見劣りする物ではないと祖父である優作からも太鼓判を押すくらいだった。

その事に工藤家全体としてやっぱり新一や優作の血を引く子だというように和やかな空気が流れることになるのだが、その裏で弟である悟は一人そんな光景に徐々にではあるが危険な予感を感じていった。一見はそれがいいことのように見えるが、家族という関係として歪な事が起き得る予兆なのではないかと・・・


















・・・そんな風に悟が感じていた中で時間は進んでいくのだが、コナンと共に二人が小学生の中学年に上がった頃にその歪さが目に見えていく事になった。



「・・・また新一は依頼で出張で蘭はそっちにくっついていって、コナンもそっちにくっついて行ったか・・・」
「ごめんなさい、おじいちゃん・・・いつもいつも・・・」
「悟は悪くねー。悪いのは新一と蘭の二人だ・・・まぁコナンもコナンであの二人に不満もないどころか、嬉々として普通に付いていく辺りは本当に新一に似たんだろうな・・・」
「僕もそう思います・・・」
・・・母方の祖父である小五郎の住処にて。
居間にて呆れたような様子を見せる小五郎に悟は申し訳無さそうな顔を浮かべ、悟のせいじゃないと言いつつも娘夫婦やコナンが似たような行動を取る事に呆れ、悟も否定出来ずに気を落としつつ同意するしかなかった。親達と兄の事を擁護出来ないと。
「・・・でも何ていうか、今はまだいいかもしれないけどこのままが続くと良くない気がするんです・・・特に兄ちゃんの事を考えると・・・」
「・・・それは、どうして良くないと思うんだ?」
「・・・僕もどう言っていいか分からないですけど、優作のおじいちゃんとお父さんの昔の事を聞いたのと、今の兄ちゃんの状況が違う事が気になるんです・・・そして多分兄ちゃん自身もどこかそういったことを漠然と感じてるんじゃないのかって事も・・・」
「・・・悟はそういった事を感じてるってのか・・・」
ただそんな状況の中で特にコナンについてがまずいんじゃないかと思うと複雑そうに話す悟に、小五郎もまだ十歳にもなってない子どもが心配し過ぎだと思わず真剣に受け止める。
「・・・分かった。何かあったらすぐに俺に報せてくれ。いつもは悟達は工藤の家で暮らしてるからあまり俺は関われねぇが、何かあれば俺もどうにかするために動くからよ」
「でもそれは・・・」
「言ったろ、何かあればだ。何にもないならないでそれでいいで済ませるし、何かありゃ俺も助けになるからよ」
「っ・・・分かりました。ありがとうございます、おじいちゃん」
それで小五郎は自分もいざとなれば助けになるよう動くと言い、申し訳なさそうにしていた悟の頭を撫でつつ笑顔を見せれば驚きを少し浮かばせつつも、悟はそっと礼を言った。小五郎の気持ちを真摯に受け止めて。









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