あるべき形とは何かを見失う者達と見定める者達

・・・そうして二人が頷いた所で杉下は話を終わらせるとし、二人は部屋を後にしていった。その上で杉下は携帯で電話した後、部屋を出ていく。






「・・・終わったか、杉下」
「えぇ、無事に済みました。伊丹さんは毛利さん達との話に時間を使っているようですから僕一人でこちらに来ましたが、夫妻の様子を見る限りでは下手な行動は取らずに工藤君達の制御に取り掛かってくれるでしょう」
「そう、お疲れ様」
・・・そうして向かった先は小野田の所であり、事が済んだとの答えに小野田は微笑みと共に労いの言葉をかける。
「しかし貴方も人が悪い・・・工藤君についてマスコミに情報を流したのは貴方でしょう」
「そこについては先に言ってお前にも納得してもらっただろう。どうせ工藤君の性格を考えれば僕もそうだが、お前からなら尚更呼び出しをして注意をしたところで素直に聞く訳はないだろうから、マスコミを使った方が効果はあるだろうとね」
「おかげでスクープがゲット出来た美和子さんの機嫌は良くなったと亀山君は不機嫌そうに言っていましたよ。亀山君としては工藤君が中学生ということもあってもう少し穏便に言葉でどうにかならないかと思っていたとのことだったので、今回の事で少しへそを曲げる事になりました」
「彼らしいね。けど一応へそを曲げるくらいで済んでいる辺り、彼も今回の件で言葉で説得なんて無駄だっただろう事は理解しているということかな?」
「えぇ。事件が起きてすぐに通報しなくなったことや話をしに行ってもそんなことはしていないと誤魔化していただろうこと・・・そして今回の件が起きたことと伊丹さんから不幸中の幸いであったり少しくらい痛い目を見ないと分からなかったと言われ、もうそういう物だと思うようにすると言いましたよ。まぁ完全に頭で理解して受け入れるにはまだ少し時間がかかると思いますが」
「はは、彼らしいね」
そんな労いもさておきと今回の件が小野田からの事だろうと杉下が発していくのをきっかけとして、二人は優作達に明かしていない裏での事についてを話し合う。






・・・小野田は官房長という立場にある事からマスコミに注目される立場にあるが、それと同時に隠然たる権力を持ってマスコミを動かせるだけの力もあった。ただ今回に限っては特命係に所属している亀山の奥さんである美和子に話をして、新一の事を報道してほしいと頼んだのである。その際には特命係も居合わせる形でだ。

こういった形に小野田がしたことに関しては警察よりも早く事件を解決するために新一が黙って行動していた上で実際に被害が出てしまったこともだが、新一が特命係関連の事を言って自分のせいだけじゃないと言い出して警察にその目が向きかねない事に・・・何より次に似たような事が起きる事もだが、そこで蘭のように犯人を撃退出来るような存在がいなければ正に大惨事にしかならないのが目に見えたから、新一に社会的な制裁を与えるべきと考えたが故である。

ここで単なる制裁ではなく社会的な制裁としたのは小野田が言ったが、新一の性格を考えれば単に次からはやるなと自分や杉下だったりから注意されるだけですっぱり事件を自分で解決する為の行動を止めるなど有り得ると思わなかったからだ。新一からすれば自分が探偵として動くことや目暮達との距離感を微妙にした相手ということもあるが、事件が解決したなら別にいいだろうと自分や周りの被害やら何やらは死なないのもだが、肉体欠損レベルのダメージにも行ってないから別にいいだろうと考えかねない事からと。

だから小野田は美和子を通じてマスコミに今回の事件の情報を媒体に載せることを頼んだ上で、杉下達に親達や蘭に話をするようにと命令を下したのである。新一の勝手からくる行動について世間に報せる形でそれらを抑制させると共に、蘭の危険度も度外視出来ないという事も併せて親達に話すことでもう好き勝手させないようにするためにとだ。

・・・ただそんな命令に不満を口にしたのが話に出た美和子の夫である亀山なのだが、そこに関しては前述の通り新一は痛い目を見なければ分からないだろうといったように言ったことや、ここで言葉だけで引いたと見せたように動いて後で平気な顔で似たようなことが起こしただとか被害が出てしまえば、取り返しがつかないなんて話ではなくなる・・・そういったことを主に伊丹から聞かされ、亀山も渋々引いたのである。お人好しで善性が強い亀山ではあるが、流石に新一もだが他にも被害が出る可能性と天秤にかけてまで新一を大丈夫と太鼓判は押せないと今までの経緯や聞いた性格から判断せざるを得ないと。









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