あるべき形とは何かを見失う者達と見定める者達

「・・・多少例外もありますが警察は荒事があった場合に備えて武道に護身術に捕縛術といったような物を身につけますが、それらはあくまでも犯人などの抵抗を無力化するためであり出来る限りは身体にダメージを抑える物です。勿論やむなしの場合の判断も出来ますが、それでも出来る限りは拘束して捕縛というのが基本であって身体にダメージを与えるのは望ましい事ではありません・・・しかし蘭さんは捕縛や無力化を前提とした動きをしていないどころか、相手を組み技無しの打撃で倒すことのみを考える実に空手らしい動きと言えますが、だからこそ肉体へのダメージは組み技などとは比べ物にならない程大きい上に危険度も高くなります。ましてや首から上という人体において致命的と言うところを狙うとなれば尚更です」
「「っ・・・!」」
ただそこまで言った上で少し手を動かして警察と蘭がいかに敵対者に対しての行動が違うかもだが、故にこそ蘭の空手による危険性が強いか・・・それらを語っていく杉下に二人は表情を悪くしてうつむく以外になかった。悪い方のもしもが次から次へと出てくるその中身に。






・・・杉下がここまで言った事もだが優作達がこうも戦慄しているのは蘭が中学生という年齢など関係なく、習っている空手により今の時点ですら並大抵の大人すら敵わないレベルの強さを持っているからだ。現に件の事件にて新一含めて何人も怪我させるだけ大暴れした犯人を一人で怪我などなく撃破したのである。

そして件の犯人は捕まったのだがムチ打ちというダメージを負うくらいに蘭の打撃の威力は強く、それこそ当たりどころが悪ければより酷いダメージを負いかねなかった。これに関しては蘭なら力加減だとか狙っていい場所は分かるといった擁護をしたい者もいるかもしれないが、やはり組み技や投げ技といった技と違い打撃・・・それも倒すのに効率的だからとは言え人体の中でも特に重要な器官が集まる首から上を積極的に狙うなどというやり方は、もしもの事が起きる可能性はどうしても否定出来ないのは事実だった。

そして実際ここで止まらせなければ蘭の今後の事で不安以外残らないのも確かだった・・・特命係や小野田と昔から関わってきた者がいない世界線の未来では、新一の近くにいることで事件に巻き込まれやすい上に荒事で空手を使うことに慣れていった蘭は、その実力が高かったことも加わり基本的に負けることはなかったし暴れる者に対して致命的なダメージを負わせる事もなかった。だがその攻撃力は凄まじくて人の頭を蹴った時にホテルの柱にその頭が当たった時には柱にヒビを入れていたし、プロレスラーが犯人だった際にシャイニングウィザードというプロレスラー顔負けの一撃を顔面に躊躇いなく放ってその相手をダウンさせたこともある。

だがそれは別の世界線の未来の話であって、今の杉下達が知る由もない話なのだが・・・それでも今の時点ですら並大抵の大人には負けないくらいには腕が立つし、人を殺しかねない危険性は十分に有り得るのだ。そんな世界線の事は知らずともまだ中学生という年齢であることからまだまだ空手の腕前が成長していく事は大いに有り得るというのに加えて、新一の自分が事件を解決したいというワガママを黙認しながら付き合うとなればそうなる未来になり得るという可能性は決して否定出来ず、常につきまとう事になる事は。

だからこそそんな蘭を止める事と新一の事をどうにかするために、杉下達は動くことにした。いや、正確に言えばもう事態は動いているのである・・・










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