救う者と救われるもの 第十一話

「アリエッタ!?」
フレスベルグに捕まってこちらに来たのはジューダスの思っていた人物とは少し外れたアリエッタであった。



何故ジューダスがアリエッタが来ることが意外であるのか、それはジューダスがアリエッタがルークの事をうっかり手掛かりのような事を口走ったために別の六神将がルークの行方を調べに来たと思っていたから、アリエッタ自身が来る事はルークと繋がっている可能性があると六神将に嫌疑をかけられるだろうから、送られてくることはないとジューダスが思っていたからだ。



だがアリエッタはそんなジューダスの心の内を知らず、フレスベルグから離れると急いでジューダスの元へと駆け寄ってきた。
「ルークは、ルークはどこですか!?」
「落ち着け、アリエッタ!一体何があった!」
内心ではアリエッタを警戒していたジューダスであったが、戦闘の意志が全く見られない焦った様子に警戒心を若干緩めてアリエッタをなだめる。
「あ・・・えと、アリエッタ、ルーク達に危険、教えに来た、です!」
「危険?一体どういうことだ?」
「・・・アッシュ達がルークの事を探せって言って来た、です」
「何!?」
アリエッタからの言葉に、今度はジューダスが表情を険しくする。
「リグレット、言ってたです。いざとなったらルークを拉致するって・・・それでアリエッタ、ルークの居場所確認の為にケセドニアに行けって言われたです。けどルーク達、ケセドニアにいなかったから多分こっちの方にいるかもって思ってここに来た、です」
「・・・成程、そういうことか。お前はこのことを知らせに来たというのは分かるが、いいのか?リグレット達に秘密にするような行動を取っても」
「・・・ルーク何もしてないのに、リグレット達、ルークの事言ってる時の顔、すごく怖かった、です」
ギュッと人形を抱きしめながら喋るアリエッタの表情はどこと無く泣きそうに見える。
「だけどアリエッタ、リグレット達の言う事聞くしか出来ない、です。でもやっぱり、ルーク達に危険になって欲しくない、から・・・」
「もういい、アリエッタ・・・」
言葉の端々からどんどん口調がつたなさを増していく様子を見て、ジューダスは無理に喋らないようにとアリエッタを制する。
「これ以上無理に喋らなくてもいい。お前の言いたい事はわかった。だから早くリグレット達の元へ戻って・・・?」
なだめてアリエッタを帰そうとジューダスが言いだそうとすると、今度はジューダスが途中で話を止める。アリエッタがその様子に泣きそうな顔ながらも訝しんで様子を見ていると、いきなりジューダスが表情を険しくしてアリエッタに向き直り言葉を放って来た。
「アリエッタ、お前は一人でここに来たのか?」
「はっ、はい。どうした、ですか?いきなり?」
「・・・やられた」
「え?」
「・・・耳をすませて音をよく聞いてみろ」
そういわれ、アリエッタはジューダスの言葉に従い耳に意識を集中させてみる・・・するとアリエッタの耳にバサッバサッという聞き覚えのある音が聞こえてきた。その音にはっとするアリエッタの目に、ジューダスが苦々しい顔をしている様子がうつる。
「・・・分かったか?あの羽音はお前と一緒に来たのとは別のフレスベルグの羽音だ」
「どうして・・・?」
「・・・アリエッタを追い掛けて来たのだろう、神託の盾の下っ端が来たのならいいが六神将が来たというなら・・・」
予想外も予想外な事態にジューダスはこの状況をどう打破すべきかと、頭をフル回転させる。
そして数秒もすると考えもまとまり、ジューダスはアリエッタへと勢いよく言葉を放つ。
「アリエッタ!お前はこの先へ行け!ルークはこの先にいる!お前はルークがこの先でやってる用事が終わったら早くルークに戻って来てもらうように言ってくれ!」
「は・・・はい!」
勢いよく放たれるジューダスからのすごい剣幕の言葉にアリエッタは戸惑いながら従う。アリエッタがセフィロトへと続く扉の中に入っていく様子を見たジューダスは改めて気を引き締めながら扉の前に陣取る。



(・・・斥候程度に送った下っ端だと思いたいがな)



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