救う者と救われるもの 第十一話

(大分すっきりしたな)
カイツールを離れアクゼリュスへと戻る道、ジューダスは涙の後がうっすら見えるルークの横顔を見て内心で安心する。
(無理をするな、などとも軽々しく言えん・・・ルークの場合は事情が事情だ・・・入れ込むくらいの方が士気も上がる。だがその分ルークは溜め込む傾向にある・・・)
自らの思いに潰される事はないだろうが、プレッシャーの中で動くのは心身共に負担が普通に暮らしている時に比べて尋常ではない。ましてやルークは人生経験という意味では幼い子供程度の年月分の経験程しかない。自らの内だけで感情を整理するのはまだ難しいはず、ジューダスはそう思いルークを敢えて追い掛けてなだめはしなかった。
(・・・泣く事ですっきりするのならそれでいい。気持ちに決着をつけることが出来るのはあくまでも自分だけだ)
自らを振り返る程にジューダスは思う、リオン・マグナスとしての時間を過ごしていたあの時、自分は泣きたいという気持ちすら強がりで消して来たのだと。
(自らの心を欺き続けるのはただ辛いだけ・・・自分一人だけの時にまでそれを自分に強要するのはな)



自らの気持ちを正確に推し量れるのは外ならない自分だけ。自分にはシャルティエがいたとはいえ、シャルティエにも言いたくない事もあった。
カイル達と出会い、旅をするにつれジューダスは二つの決断に迷っていた。このまま旅をカイル達と続けるか、別れるかの二つの決断を。

自らの想いはカイル達と共に行きたい、だがかつてのジューダスと名乗る前の自分は神の眼の騒乱に荷担した大罪人リオン・マグナス。おめおめとこのまま付いていけば自らの正体がばれてカイル達を傷つけてしまうかもしれない、そんな相反する想いを胸にエルレインにより正体をばらされるあの時まで迷っていたまま旅をしていた。

シャルティエは坊ちゃんの決めた事に従います、と言いながらもジューダスとともに悩んでくれた。そんなジューダスにはシャルティエに対しての負い目もあった・・・かつての仲間、ディムロス達との決別。シャルティエはリオンとしての判断を至上と仰いでくれた。それはジューダスとしても救われた。だが戦友との別れにシャルティエも苦い思いをしなかった訳がない。

そんなシャルティエを差し置き、自分に仲間との時間があってもいいはずがない。だがシャルティエは自らを立てて仲間との時間を勧めてくれた。
負い目と善意、カイル達の事も考えてはいたがシャルティエへの想いもジューダスの苦悩にはあった。

・・・吐き出す事が出来ずに悶々と頭に残る想いと強がりからくる孤立、ジューダスは不安すら口にしようとすらしなかった自分を省みてルークを自分とは同じ道を歩ませたくないと思っていた。



「ルーク」
「何?ジューダス」
「・・・いや、なんでもない。早く行くぞ」
「え?ちょっ、ちょっとジューダス・・・?」
自らの言いたい事はルークに言うべき事ではない、そうジューダスは思い止まりルークより早足になり紡ごうとした言葉を口の中だけに納めた。



「お前は僕のようにはならないでいい・・・」




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