救う者と救われるもの 第十一話

アクゼリュスを後にしたルーク達は護衛の為にゆったりとした足取りではあったが、それでも数日後にはカイツールへと無事に到着した。





「着いた・・・」
兵士達の先頭に立つルークはカイツールに着いた瞬間、張り詰めながらも毅然とした態度から気持ちが緩んだ安堵の声をあげる。だがそれも一瞬で改めて表情を引き締め、兵士達に向かい直る。
「皆さん、ご苦労様でした!これでアクゼリュス救援の任は終わりました!これも皆さんのおかげです!本当にありがとうございます!後はマルクトの住民受け入れの体勢が整うまでアクゼリュスの人達をよろしくお願いします!」
「「「「「はっ!!」」」」」
兵士一同はルークに敬礼を行い、皆それぞれに持ち場へと散らばっていった。
「・・・本当にありがとうございました」
「え?」
ふとかかって来た声にルークが後ろを振り向くと、神妙に頭を下げているパイロープがいた。
「兵隊さん達の話を後から聞いたらもう少し救援が遅かったら手遅れになる人達が多かったって・・・あなた方が来てくれたから本当に助かりました、ありがとうございます」
その言葉にルークはチラリとジューダスを見て話をする。
「・・・お礼ならジューダスに言って下さい。アルマンダイン伯爵を説得するって言ったのはジューダスだから」
「・・・僕はあくまで案を出しただけだ。それに乗ったのはルーク自身、僕自体には礼を言われる筋合いはない」
振られたジューダスはそれを固辞してルークの手柄だとすり替えようとする。
「でしたらどちらにも礼を言わせて下さい。本当にありがとうございました」
何度も下げられる頭に、これ以上譲り合うのも野暮だと思った二人は顔を互いに見合わせて素直に謝意を受け取る。
すると、こちらにパイロープの子供がこちらに駆け寄ってきた。
「お父さ~ん!」
「おぉ!・・・おっととっ・・・」
駆け寄って来た子供を受け止めようとするが、勢いづく子供を受け止めきれずパイロープは尻餅をつく。
「だらし無いなぁ、お父さん。疲れてるの?」
「それはそうだろう、お父さん今ここに着いたばかりだぞ?」
ハッハッハッと息子のやんちゃな行動に笑いながら対応するパイロープを見て、ルークはその場からすっと離れていく。






「救えてる・・・救えてるんだよな?俺。あの人達を・・・」
誰もいない建物の影、ひっそりとルークは声を殺して独り言を呟く。
「・・・まただ・・・涙が、涙が止まらない・・・うっ、くっ・・・」
アクゼリュスは自らの最大の罪そのもの、そう思っているルークにとって彼らの幸せな姿は本当に喜ばしいという反面で自らの過去の罪を自覚するものであった・・・誰かを救うことが自らを傷付ける、それは両刃の剣に似てはいる。ただ救いは未来への希望を繋ぐもの、痛みを知らずして掴める物が希望や救いなどとは言わない。だからこそ痛みを越えて掴む価値のある物なのだ。ルークも無自覚ながらにそれを理解している、だからこそ歩みを止めようとはルークの頭の中には諦めるというのはなかった。






「・・・ごめんジューダス、勝手に離れて」
数分後、泣いて気を落ち着けたルークがジューダス達の元に戻る。
「構わん、早く行くぞ」
「うん。じゃあパイロープさん、俺達はこれで」
「お世話になりました」
「じゃあまたね!お兄ちゃん達!」
バイバイと振られる手を後ろにし、ルークとジューダスはカイツールを後にして三度アクゼリュスへと向かおうと歩んでいった。





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