救う者と救われるもの 第十話

「えぇ、最初に感じた引っ掛かりはまずカイツール軍港でのことです」
「港ですか?」
「はい。あの時アルマンダイン伯爵はルークの護衛にと兵士をつけたと言いましたが、港の兵士半分以上をつけるのはやり過ぎではないかと私はその時思いました。まぁその時は流石に考えすぎだと思い何も言わずに去りましたがね」
「それで今聞いた事でどういった引っ掛かりに気付いたんですの?」
「落ち着いて下さい、ナタリア。まだこの推測には段階を追わなければ説明出来ない所があるんです」
「・・・分かりました」
「ありがとうございます。それで次に引っ掛かりになったのは、ケセドニアで領事館に行ってルークの名前が確認出来たのにバチカルにはまだルークが戻って来ていないという事です」
「・・・確か大佐は何か理由があってケセドニアにいるのではないかと言っていましたよね?」
「はい、ですがそれもまた後で説明いたします。そして最後の引っ掛かりはアクゼリュスが障気により壊滅的な状態であるのに、ルークがそれを見過ごしてまごついた態度をとるのか、という事です・・・ルークならこの事態を策だからとアクゼリュス到着に遅延する行動に納得すると思いますか?一刻一刻とアクゼリュス住民に障気が襲い掛かるこの状況を」
「「・・・思えません(わね)」」
「・・・私もそう思い色々考えていたんです。ですがケセドニアでやれる事などどう考えても思い浮かばなかった。ケセドニアで目立った行動をとればすぐさま話題に上がり、ルーク達の噂くらいバチカルにすぐ届く。しかしそれもない。かと言って目立たない行動ははっきり言ってアクゼリュスとは遠く離れているケセドニアでは無意味に等しい。それにジューダスがそのような無意味な行動をとるはずがありません。今までの経過からしても、明らかに不自然過ぎる・・・ですがナタリアから聞いた陛下の変化で私は一つの推測が生まれたんです。これは勝手に私達が思い込んでいたのではないのかと」
「思い込み?・・・大佐、具体的にはどういう思い込みなんですか?」
「まぁ単刀直入に言いますが、ルーク達は自分達より先に行ったという思い込みです・・・いえ、正確に言えば思い込まされたんですよ。ジューダスに」
「どういう事ですの?」
「恐らくですがルーク達はヴァン謡将と別れた後、アクゼリュスへ向かったんでしょう」
「「・・・えぇ!?」」
「その根拠は一つ目の引っ掛かりの軍港兵士の大量失踪です。いくらなんでもルークはそのような数の兵士が来るのは断るでしょう。ジューダスも恐らくそうするでしょうし。ならば突然兵士があてもなく消えたのは何故か?それはルークとともにアクゼリュスへと向かったんだと思います」
「ならアルマンダイン伯爵がルークは先に行ったといっていたのは・・・?」
「ほぼ嘘でしょう。そしてそのことからアルマンダイン伯爵も陛下のように、内密でルークに協力していることがほぼ確実です」
「ならばルークの名前があった領事館は?あなたの言う事が本当ならルークはティア達より遅れてケセドニアに着いたはずです!」
「それはアルマンダイン伯爵の使いの兵士辺りがルークは先に来たという事を錯覚させるために書いた嘘だと思われます。そして私達がバチカルに来た次の日にルーク達がここに来たという訳ですよ・・・陛下の変化が起こらなければまだルーク達はケセドニアにいると推測すら出来ていなかったのかもしれませんがね、私も」
「では何故ルークはそのような間怠っこい方法をとりますの!?手間がかかって仕方がありませんわ!」
「六神将の目を欺くためですよ。それと同時にルークの所在を不特定にして、バチカルから離れる事のないように心理に鎖をかけたんですよ。もし無理矢理ルークを連れていこうにもケセドニアにいなかったらバチカルに帰ったのかもしれない、バチカルにも戻って来ていないが体調を整えれば帰って来るだろう、と。ケセドニアからは船で行けば時間はかからないのでそう思考に鎖をかければ迂闊に動けなくなりますからね、バチカルから。そして策を案じた当のルーク達は陛下に協力を仰いだため、現在はモースとヴァン謡将の手先に邪魔をされる事なく悠々とアクゼリュスへと向かっていることでしょう・・・まさかここまでジューダスの考えが深いとは思いませんでしたがね」
ジェイドが眼鏡を押さえ少し息をゆっくりと大きくはく。



「さぁ、これから私達はどうしますか?」





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