救う者と救われるもの 第十話

「・・・大して変わった所はありませんでしたわね」
陛下の部屋から再びジェイド達が待つ部屋へと戻る道さなかナタリアはぽつりと呟く。
「ジェイドはがっかりするかもしれませんわ・・・」
この程度では欲しい情報などとは言えないと、ナタリアはそう思いながら少し足を早めた。





「・・・という訳です」
そして程なくして部屋に戻ったナタリアは陛下とのやり取りをすぐにジェイド達に説明を始めた。ナタリアは今その説明をちょうど終えたばかりだ。
「大して変わった所はありませんね、大佐」
ティアはナタリアと同じく変な所はないと思い、ジェイドにも同意を求める。
「・・・いえ、そうでもありませんよ」
「「・・・え?」」
ところがジェイドから帰って来たのは二人とは真逆の答え、その返答に二人はただ驚く。
「あなたにこの事を確認していただかなければ私はまだこの推測にすら辿り着けませんでした。ありがとうございます、ナタリア」
「え?え?それはどういう事ですか、大佐?」
何か憑き物が落ちたようにスッキリしたジェイドの顔とは逆に、ティア達はなんのことか訳がわからないといった表情のままだ。
「・・・あぁ、すみません。それはこれから話させていただきます」
二人の困惑の表情に気付いたジェイドは自らの推測を語るべく、表情を真面目に引き締め新たに二人に向かい合った。
「これは私の推測なのですが、二人。つまりルークとジューダスなる人物は既にバチカルに来ていました」
「え?そんな、セシル少将は確かにバチカルには帰って来てないと・・・!」
「そうですわ!それにお父様もルークが早く帰るのを待とうと・・・!」
「それです、ナタリア」
「・・・え?」
「陛下がそうおっしゃった事がルーク達が既にバチカルに来たという裏付けになるのです」
「「???」」
「では聞きますが、今陛下の1番近くにいるダアト所属の人間は誰ですか?」
「・・・それはモース様です」
「そう。ティアには悪いですが、モースが預言成就のために動いているのは明らか。そのモースが体調不良程度で現在和平が結ばれそうな危機に、悠長にルークを待とうなどという心構えなどあるはずがありません」
「・・・確かにモースは何度もお父様のお部屋に入っていったと衛兵が言っていましたわ」
「そのように何度もモースに言われれば、預言成就でキムラスカに繁栄が訪れる陛下にその申し出を断る理由はありません。少なくても一刻も早く戻れとの手紙が一通くらいは出されているはずです。しかし陛下は体調を整えてルークが戻るのを待とうとおっしゃった。これは以前を考えてみれば明らかにおかしい事なんです、預言を知っているはずの陛下の行動として」
「・・・!だからルークが陛下に接触して何か言ったって言うんですか!?」
「えぇ。恐らく陛下はルーク達に自らへの協力のために秘預言を明かされ、ルーク達に協力して預言阻止のために動いているからこそナタリアに待てとおっしゃったと思われます」
「だったら何故ルークの姿を見たという人が一人もいませんの!?」
「それは変装していたのでしょう。アッシュと数日前バチカルで対面したときもパッと姿を見ただけでは誰かはわからなかったでしょう。あれと同じです・・・そして彼らがバチカルに来たのはイオン様に護衛の兵士が付いた日、つまり私達がバチカルに着いた次の日の可能性が高い」
「じゃあルーク達はその日にはバチカルにいたというんですか・・・!?」
「そうでなければ説明がつかないんですよ、今までの引っ掛かりも・・・」
「「引っ掛かり?」」





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