救う者と救われるもの 第十話
「ルーク・・・無事にやっているだろうか・・・」
自らの私室の机に向かいでルーク達を心配しているインゴベルト陛下。確かにルーク達の行動には落ち度はないように思われるが、何が起こるかは予想がつかない。インゴベルトはただ結果を待つばかりしかない身に苦痛を感じていた。
「失礼します、陛下。ナタリア様が少しお話があるとのことですが」
そこに部屋の入口に陣取っていた兵士からナタリア来訪の知らせを持って部屋に入ってきた。
「ナタリアが?・・・わかった、通せ」
「はっ」
いきなり何の用なのか、ナタリアが部屋に来てまで何を話すのかわからないためじかに話を聞こうとインゴベルトはナタリアを部屋に入れるよう伝える。
「・・・お父様、少しお話があります」
兵士に部屋に通されたナタリア、兵士が失礼しますと部屋を後にするとナタリアは顔を真剣に強張らせて話を切り出す。
「何だ?ナタリアよ」
「ジェイドが言っていたのですが、導師イオンの周りに兵士の数が増えたということです。お父様は何故そのような命を出されたのですか?」
「・・・要人を護衛するのは当然であろう。いきなり何を言うのだナタリア」
ナタリアにはポーカーフェイスで応対しているが、インゴベルトは内心はドキドキしながらナタリアからの声に答えていた。
インゴベルトはルーク達がアクゼリュスに行ってから自分にも何かヴァン達の企みを止めるべく、何か出来ないかと考えた。そこでインゴベルトは何故か現時点でまだバチカルにいるイオンを見て、六神将にさらわせないように兵士を配置するべきだと考えたのだ。
「・・・それならそれは構いません・・・話は変わりますが、ルークからの手紙やルークが帰って来たとの報告はございませんでしたか?」
ナタリアがルークの事を話題に出すと、インゴベルトは少し顔を歪めた。
「・・・いや、そういう報告は入ってきてはおらん」
事実は既に一回バチカルに戻っている、そうインゴベルトは話したかったがこのことがナタリアから誰かの口づてにモースの耳にでも入れば何かしらの妨害の手が入るかもしれない。このことは全て終わらせるまで黙っていなければいけない、インゴベルトは愛娘に嘘を貫かねばならない苦渋の想いを胸に嘘をついた。
「心配するな、ナタリアよ。ルークはケセドニアで体調を整え次第帰ってくる、必ずな・・・」
帰ってくる、という辺りはナタリアに向けてもあるが自分への励ましもある。インゴベルトは自分の弱さを痛感しながらも、せめて娘には不安を植え付けないようにと精一杯笑顔を作り肩にポンと手を置いた。
「・・・わかりましたわ」
話を聞いてナタリアは聞くことが無くなったのか、あっさりと返事を返す。
「それでは私は失礼します、お父様」
「うむ」
ナタリアは頭を下げると、部屋から出ていった。
「・・・秘密とするのは苦痛だな・・・とはいえルーク達はわし以上に秘密裏に行動しておるのだ。わしもしっかりせんとな」
自らの役目は彼らを引き止めること、改めて重要性を理解したインゴベルトは顔を引き締めて役目をまっとうすると決心した。
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自らの私室の机に向かいでルーク達を心配しているインゴベルト陛下。確かにルーク達の行動には落ち度はないように思われるが、何が起こるかは予想がつかない。インゴベルトはただ結果を待つばかりしかない身に苦痛を感じていた。
「失礼します、陛下。ナタリア様が少しお話があるとのことですが」
そこに部屋の入口に陣取っていた兵士からナタリア来訪の知らせを持って部屋に入ってきた。
「ナタリアが?・・・わかった、通せ」
「はっ」
いきなり何の用なのか、ナタリアが部屋に来てまで何を話すのかわからないためじかに話を聞こうとインゴベルトはナタリアを部屋に入れるよう伝える。
「・・・お父様、少しお話があります」
兵士に部屋に通されたナタリア、兵士が失礼しますと部屋を後にするとナタリアは顔を真剣に強張らせて話を切り出す。
「何だ?ナタリアよ」
「ジェイドが言っていたのですが、導師イオンの周りに兵士の数が増えたということです。お父様は何故そのような命を出されたのですか?」
「・・・要人を護衛するのは当然であろう。いきなり何を言うのだナタリア」
ナタリアにはポーカーフェイスで応対しているが、インゴベルトは内心はドキドキしながらナタリアからの声に答えていた。
インゴベルトはルーク達がアクゼリュスに行ってから自分にも何かヴァン達の企みを止めるべく、何か出来ないかと考えた。そこでインゴベルトは何故か現時点でまだバチカルにいるイオンを見て、六神将にさらわせないように兵士を配置するべきだと考えたのだ。
「・・・それならそれは構いません・・・話は変わりますが、ルークからの手紙やルークが帰って来たとの報告はございませんでしたか?」
ナタリアがルークの事を話題に出すと、インゴベルトは少し顔を歪めた。
「・・・いや、そういう報告は入ってきてはおらん」
事実は既に一回バチカルに戻っている、そうインゴベルトは話したかったがこのことがナタリアから誰かの口づてにモースの耳にでも入れば何かしらの妨害の手が入るかもしれない。このことは全て終わらせるまで黙っていなければいけない、インゴベルトは愛娘に嘘を貫かねばならない苦渋の想いを胸に嘘をついた。
「心配するな、ナタリアよ。ルークはケセドニアで体調を整え次第帰ってくる、必ずな・・・」
帰ってくる、という辺りはナタリアに向けてもあるが自分への励ましもある。インゴベルトは自分の弱さを痛感しながらも、せめて娘には不安を植え付けないようにと精一杯笑顔を作り肩にポンと手を置いた。
「・・・わかりましたわ」
話を聞いてナタリアは聞くことが無くなったのか、あっさりと返事を返す。
「それでは私は失礼します、お父様」
「うむ」
ナタリアは頭を下げると、部屋から出ていった。
「・・・秘密とするのは苦痛だな・・・とはいえルーク達はわし以上に秘密裏に行動しておるのだ。わしもしっかりせんとな」
自らの役目は彼らを引き止めること、改めて重要性を理解したインゴベルトは顔を引き締めて役目をまっとうすると決心した。
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