救う者と救われるもの 第十話

大分時が経ちジェイド達が和平に来てから一週間程が既に経とうとしていた。




「遅いですね、ルーク・・・」
「そうですわね・・・」
「・・・」
現在ジェイド達は自らにあてがわれた客室の一つに集まり、ルーク達の帰りを待っていた。
「屋敷にいるガイからも連絡はありませんし・・・はぁ、ルークはどうなさってるのでしょうか・・・」
憂鬱そうにナタリアは溜息をはく。現在この場にガイがいないのは、もしルークが先に屋敷に帰ってきた場合を考えて連絡役として残っているためだ。
「・・・ですが、イオン様はまだこちらにおられます。これなら六神将も迂闊には動けないので私はまだ最悪の状況ではないと思っています」
そこに重い顔をして何やら考え事をしていたジェイドが二人の会話に加わる。今現在六神将の狙いはイオンをさらい、セフィロトへと続く扉をイオンに開けさせること。それさえわかっているならと、ジェイド達が取った対策はルークが帰って来るまではなんとしてでもイオンを守るという事であった。なのでイオンはジェイド達の見張りにより漆黒の翼にさらわれることなく、まだバチカルにいることが出来ている。
「・・・ですが、妙なんです」
「妙?何がですの?」
「私達がバチカルに来た次の日辺りから私達の周りに兵士の数が増えたように思われます・・・いえ、正確にはイオン様の周りに・・・ですが」
確かに最初バチカルに来た時は最低限いればいいだろう人数の兵士が配置に就いていただけ、しかし今はイオンの周りに要所要所を固めるかのようにさりげなく兵士が配置されている。これは見張りをするジェイド達も助かっている。事実この配慮があったため、イオンはアニスとともに別の部屋でゆっくりとしている。この話はイオンに聞かれたくなかったために確かに助かっている、だが・・・
「あからさまに・・・というわけでもありませんが、いきなり兵士の数が増えた事が不自然なんです」
ジェイド達は護衛のための兵士を増やして欲しいなどと一言も話してはいない。しかしいきなり訳もなく兵士が増えた事がジェイドには疑問になっていた。
「でしたら私がお父様に聞いてまいりますわ。お父様がその指示を出されたようでしたので」
ナタリアがジェイドの疑問を解決しようと、陛下に聞きに行くという。
「・・・そうですね、ではお願いします」
そのナタリアからの言葉に少し間を開けてジェイドは返事を返す。
「では、いってまいりますわ」
早速話を聞きに行こうとナタリアは急いで椅子から立ち上がり、颯爽と部屋を出ていった。
「陛下が・・・ですか」
「大佐?どうしたんですか?」
「いえ、なんでもありません」
ティアに返事を返すとジェイドは眼鏡を上げる形で手をかけていかにも何かありますという感じで考える体勢に入った。





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