救う者と救われるもの 第一話

「あ、あんたらもしかして漆黒の翼か!?」
ルークはジューダスの存在を確認してジューダスを凝視し、ジューダスはその視線に警戒をあらわにしながらルークを見ている。ルークとジューダスがそんなにらめっこみたいな状態で向き合っていると、辻馬車の御者がいきなりルーク達を指差して叫んだ。
「違います!!漆黒の翼は三人組ですけど、俺達はこの通り二人です!!」
それを慌てて訂正するルーク。ジューダスは漆黒の翼と聞いた瞬間、違和感を感じていた。
「漆黒の翼とはどんな連中なんだ?」
ジューダスの記憶にある漆黒の翼というのはここまで恐れられる存在ではない。そういった意味での確認だった。
「最近ここらで暴れてる盗賊団さ。そこのにいちゃんが言った様に女一人、男二人の三人組のな」
その馬車の御者の言葉を聞いて、微妙に食い違っている、違和感を感じたのは間違いではなかったとジューダスは納得した。ジューダスの記憶にある漆黒の翼は恐れられる存在ではなく、寧ろ馬鹿にされる(他に表現しようがないbyジューダス)ような存在だ。
(時間が進めば盗賊になり下がるのか、それとも考えたくはないがここは僕の生きた世界ではない・・・)
「・・・あの、あなた達は?」
ジューダスがその違和感について考えこんでいると、今まで話を聞いていたティアが質問を投げ掛ける。
「ああ、俺は辻馬車の御者さ。ちょっと水を汲みにここまで来たんだ」
「じゃあこっちの人は・・・?」
御者の返事を聞いたすぐあと、ルークが不安げに質問をジューダスに投げ掛けてきた。
「・・・道に迷ってここに来ただけだ、僕の事は気にしなくてもいい」
ジューダスは自分の状況が把握出来ていない今迂濶な事は言えないと判断し、無関係を決めこもうとした。
「道に迷ったって事は何処かに行こうとしていたって事だろ?首都が目的地なら馬車に乗るか?」
親切心から言っているのか、商人魂から言っているのか分からないが、御者がジューダスに馬車を勧めてきた。
「生憎だが金がない」
簡潔に一言で断るジューダス。だがジューダスは嘘はついていない。路銀があるなら馬車で首都に行き、情報を集めたいが金がないため軽く断った。

「・・・俺たちも首都に行くんですけど・・・よかったら一緒に乗りませんか?あ、代金は俺が出しますから」
その言葉で三人が一斉にルークを信じられないという目で見てきた
「・・・因みに、料金はどれくらいだ?」
「あっ、ああ・・・首都まで一人一万二千ガルドで、三人乗せるなら合計三万六千ガルドだよ」
「払えるの?ルーク」
上からジューダス、御者、ティアの順である。いくらなんでもそのような大金を持っている筈がない、三人はそう思っていた。
「これでいいですか?」
袋からガルドを取り出し、御者に大量のガルドを渡したルーク。御者は驚きながらも確認を行う。
「・・・三万六千ガルドきっちりいただいたよ」
ガルドの確認を終えた御者も、少し信じられないという感じで嬉しいというよりも戸惑いが大きいようだ。
(・・・まあ、びっくりするよな。俺もガルド入れるために袋開けたらあの時のまんまのガルドが入ってたんだから)
ルークがティアと渓谷を降りている最中の魔物との戦いの終わり、魔物からいただいたガルドをガルド袋に入れようとしたとき、ルークはティアには気付かれていないが内心驚きまくっていた。飛ばされた時点ではある筈がなかった大金がそこに。それでどれくらいかと数えてみるとヴァンと戦う前に確認した額そのままだった。アニスが徹底した節約を心掛けていたため、ガルドはどんどん貯まっていき最終決戦前には五十万ガルドを突破していた。
(ごめん、アニス)
銭勘定に厳しいアニスがコツコツ貯めたお金を自分が持っていった事、そのお金を無断で使った事をこっそり心の中で謝った。




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