救う者と救われるもの 第九話

「率直に申し上げます。陛下に協力していただきたいのは主にモースとヴァンを引き止めていただきたいのです」
「モースとヴァン?」
「はい、預言通りの流れを作るのもヴァンの望む流れもアクゼリュス行きから始まります。ですのでここバチカルに二人を繋ぎ止めておいていただきたいのです」
「・・・わしにしてほしいことはわかった。しかし、そなたらはどうするのだ?」
「私達はまたこれよりアクゼリュスに向かいます。そこで陛下にはいくつか手紙を書いていただきたいのです。まず、アクゼリュス救援を容認した書簡。これはカイツールにいるアルマンダイン伯爵が正式な救援要請を受けたとの証になります。そして次はマルクトにアクゼリュス住民受け入れの書簡と真の意味での和平を結ぶための書簡です。これはマルクトとの仲を一刻も早く取り持つ意味でも重要になります。これらの書簡を内密に用意していただければ、預言を覆す体勢が調います」
「ふむ・・・わかった、すぐ用意しよう」
ジューダスの説明を受け納得した様子を見せたインゴベルトは机に向かって筆と紙をとった。
「すまんが、ここで待ってくれ。待っている間外に出るわけにもいかんだろう?」
「はっ、かしこまりました」
確かにここまで来てばれるのは避けたい、そう考えたジューダスは同様の思考を持ってくれたインゴベルトの言葉に即座に頷いた。



「・・・うむ、これでよい」
三つの書簡を書き終わったインゴベルトは満足げに机から立ち上がって、こちらに近づいてきた。
「わしに出来ることはこれくらいしかない」
「いえ・・・十分です」
その書簡をルークに手渡しながら申し訳ない顔をするインゴベルト。ルークもその顔を見て、申し訳ない顔になりながら書簡を受け取った。
「・・・頼む、無事にやり遂げてくれ」
「・・・はい!!」
インゴベルトの悲痛に似た二人への頼みを聞き、ルークは元気よく返事を返して部屋を後にしていった。






終わりの始まり、それだけは止めるしかない。焔と裏切るものの正念場はこれから真に始まる。




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