救う者と救われるもの 第九話

程なくして光が収まり、インゴベルトは光から出てきたときにはアルマンダイン同様驚愕に満ちた表情になっていた。
「陛下・・・いきなりの事だから理解するのは難しいと思います」
そこにルークは想いを伝えるベく、間を空けずに口を開く。
「でも・・・今見た映像は全部本当に起こった出来事の映像なんです。秘預言のことも・・・」
「・・・ナタリアの事も嘘ではないのだな?」
そのインゴベルトから放たれた言葉に、苦い顔になるルーク。記憶を見せたということはあの謁見の間でのやりとりも見たということ、実の娘ではないという事も一瞬の間に知ったということになる。
「・・・はい、それは本当です」
間を空け、ルークは意を決して言い切る。
「ですが・・・それでも、ナタリアは陛下の子供です。本当の子供じゃなくても今まで過ごしてきたのは紛れも無い親子の時間、それは変わらないはずです」
ルークはインゴベルトが立ち直れると信じ、再び多少の言葉違いながらもその時のように説得する。
「・・・真実を知ってしまった以上、これ以上預言には頼れん」
「陛下、それじゃあ・・・!!」
「わしとてまだ半信半疑・・・と言いたいが、ルーク。そなたの見せてくれたものは間違いなどと一笑して終わらせていいようなものではない。・・・わしもそなたに協力しよう」
そこには不安に満ちた一個人としてのインゴベルトはいない。ルークの目の前にはインゴベルト陛下としての顔がそこにあった。
「陛下・・・ありがとうございます・・・!」
「そのように他人行儀にしなくともよい。わしの事は伯父でよい」
「陛・・・伯父上・・・はい!!」
かつてのように、それは確かに変わりつつある変化の中に前のように分かりあえる一歩を踏み出した証であった。それを感じたルークはただ感謝の意を込めて、返事を笑顔で元気に返した。




「して、ルーク。思ったのだが、そなたの後ろにいるのは誰だ?」
ルークとのやり取りに一段落を置いたインゴベルトは後ろにいたジューダスに興味を示す。
「彼はジューダスです。俺に協力してくれているんです」
「ジューダスと申します」
そういい、ジューダスは頭を丁寧に下げる。
「今俺がジェイド達と離れて行動しているのはジューダスの考えなんです」
「そうか・・・ジューダスとやら。今この場に我々だけで話すようにしたのも、そなたの考えか?」
「はい、そうです」
「そうか・・・ならばこの行動にも意味があるのだろう。話してみよ」
「はっ、かしこまりました」
本来ならルークにこれからの事を話してもらおうかとジューダスは思っていたが、自らに話を振ってきたのでジューダスはちらりとルークを身やり自分が話すと含みを入れた視線をやると、インゴベルトに向かい合い説明の体勢に入った。





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