救う者と救われるもの 第九話

「失礼します、陛下」
扉を開けたルークはフードをとりながら挨拶をする。ジューダスはルークの後ろから付いてくる形で扉を閉め、フードをとり無言で頭を下げる。
「おぉ、そなたがルークか・・・して、その格好はどうしたのだ?」
ルークを迎える笑顔を浮かべながらも、インゴベルトはルークの法衣姿に疑問を抱く。
「・・・これはバチカルに到着したことを誰にも知られたくなかったので、アルマンダイン伯爵に用意していだだいたものです」
ルークはひとつひとつ言葉を慎重に選びながらも、こちらに興味を示してもらおうと話す。



話は戻るが、アルマンダインがジューダス達に渡した袋の中身、それは今二人が着ている法衣だ。
ジューダスの思惑としては、バチカルで神託の盾に見つかるのも避けたいものであったが、もし予想違いを起こしてケセドニアで最悪ヴァンや六神将と鉢合わせしてしまえば流れは全く変わってしまう。そういう不安要素がジューダスにあった。ならばとジューダスが考えた対策は変装、カイツールを出港する前に変装するべきだと考え、アルマンダインに法衣を用意してもらったのだ。



「誰にも知られたくなかったとはどういう事だ?それにクリムゾンのところに送られた手紙によれば、そなたはまだケセドニアにいるのではなかったのか?」
意味深に話されるルークの語り口に、インゴベルトはジューダスの思惑通り食いついてくる。
「・・・陛下」



「それは神託の盾と預言を止めるためです」



「な、何を言い出すのだルークよ・・・!?」
いきなりの爆弾発言に驚きを隠せずに口ごもるインゴベルト、尚もルークは続ける。
「陛下、モースから聞きましたか?秘預言の中身を。俺がアクゼリュスに行けばキムラスカに繁栄が訪れるという預言を」
「なっ・・・!?」
畳み込むように話される言葉に、また絶句する。確かにモースから秘預言の中身をインゴベルトは聞いていた、しかしそれは確実に秘密だったはずだと、あの時の会話は聞かれていないはずだとインゴベルトは思い混乱の極みに達する。
「陛下、その預言には続きがあります。その預言にはマルクトだけじゃなくキムラスカにも滅びが詠まれているんです」
「なっ!何だと!?ルーク、何故そのような事を知っている!というよりも、そなたは何故そのような事を言えるのだ!?」
動揺を隠しきれていないインゴベルトは一も二もなくルークの言葉を信じる。ここまで来ればいいだろうと、ルークはジューダスに視線を向ける。それにジューダスはコクりと頷く。そしてルークは再びインゴベルトに顔を向ける。
「陛下、少しだけ待ってください。事情はすぐに説明するので」
そういうと、ルークは集中するかのように黙りだした。その様子をインゴベルトは動揺の表情のまま、何事かと見ている。



‘カッ’



「なっ、なんだ!?」
指輪の力で現れた光に驚きを新たにした表情を見せる、しかしそんな事はお構いなしに光はインゴベルトを包んでいった。
「上出来だ、ルーク」
光に包まれたインゴベルトを見るとルークは疲れた顔を見せる。そんなルークに彼なりに最高の賛辞をジューダスは送る。
「大丈夫だった?俺」
「あぁ、ここまでいけば後はお前らしくいけばそれでいい」
本来ならさっさと指輪の力を使う選択肢を選べばよかったように思われた。しかし、すぐに指輪を使わない方向をジューダスは選んだ。
「ここまで来て、こんなものは信用出来ないと、否定されてはたまらんからな。信用させるにはあれくらい言わねばな」
いくら指輪の映像があっても、モースの預言をインゴベルトに信じきられていては取り付くしまもなくなる。ならばとジューダスは心を揺さぶろうと先程までの会話の流れをルークに指示した。
あそこまで動揺していれば、こちらの思惑に近づいてくれる。成功したに等しい確信を持ったジューダスはルークとともにインゴベルトが光から出て来るのを待つ体勢に入った。




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