救う者と救われるもの 第九話

その後すぐに二人は船に乗り込み、何事も異常なくケセドニアを出発できた。




「ふう・・・」
船の中の船室にいるルークは教団の法衣のフードを外しながら疲れた溜め息を吐く。
「こういう服ってなんか疲れるな~・・・」
「今は法衣を脱いでもかまわん、ゆっくりしろ」
そこにルークの近くの壁に背中を預けているジューダスが声をかける。
「ん・・・そうする」
ジューダスの言葉に素直に法衣を脱ぐルーク。



「・・・ここまではジューダスの考えた通り進んでいるな・・・」
法衣を脱ぎ終わると、ルークは真剣な表情でジューダスに話し掛ける。
「・・・とはいっても油断は許されない。だからこそ僕らはこうやって急いでいるのだからな」
「・・・うん」
真剣に交わされる会話、そんな中でルークはひとつの疑問をぶつける。
「・・・ジューダス。ひとつ聞いていい?」
「・・・なんだ?」



「全部うまくいったらジューダスはどうするんだ?」



ルークから放たれた言葉に、ジューダスは顔付きを一瞬、険しくさせる。うまくいったら、それが意味するのは全てが終わった後。そのことを理解できないジューダスではない。
「・・・さぁな、僕はまだそれは決めていない。全てを無事に終わらせることしか頭になかったのでな」
「・・・そっか」
一瞬間が空いたがなんでもないように返されたジューダスの返事に、ルークはどこか不安げに呟く。



その質問の意図はルークからしてみればローレライの言葉を思い返してのことだった。
ローレライから言われたのはジューダスの事は本人と相談をしてどうするかを決めろというものであった。しかしジューダスから出てきた言葉はまだ考えていないとのこと。そのことに、ルークは今そのことを言わなくてもいいという安堵感と、いつこのことを話せばいいのかという不安感が募っていた。

そしてジューダスがルークに答えた答えはルークの事を考え、嘘をついたものだった。
もしここで自分の本音を言えば、ルークに重荷になることは容易にジューダスは想像できた。故にジューダスはルークの精神面を考え、黙って嘘をつくことにしたのだ。



そんな二人は互いの思惑に気付かず、バチカルへ向かう航路の中をゆったりと過ごしていった。





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