救う者と救われるもの 第八話

三人を引き連れて、ジェイドが向かった先はバチカルの宿の一室。尚、ナタリアは明らかに貴族以上と分かる服を隠すため、ジェイドから借りたマントを羽織っている。宿の一室でアッシュとナタリアの二人は今までの経過をジェイドから聞いている。




「・・・という訳ですよ」
自らの知りうる情報を二人に伝え、眼鏡をクイッと手で上げるジェイド。
「ジューダス・・・私もそのような名前の人物、存じあげませんわ・・・」
顎を手に置き、記憶からジューダスという名を引っ張り出すがナタリアからもジューダスの情報はない。
「なぁ、アッシュ。ケセドニアでルークの情報とか聞かなかったか?」
「いや、聞かなかった。だから俺は一足先にバチカルに来たわけだが・・・」
「ここで確認したのはルークがまだ戻って来ていないこと、だからあなたは私達に接触してきたんですね?」
ジェイドの言葉に苦々しい顔でコクリと無言でアッシュは頷く。
「・・・ナタリア、ルークからの手紙を見せて下さい。今ルークの手掛かりはその手紙しかありません」
「・・・はい、どうぞ」
重々しい雰囲気の中、ジェイドがナタリアから手紙を受取り、紙を開く。そこでガイとアッシュも中を見るべく、ジェイドの隣に位置どる。三人が手紙の中身を確認するとこのように書かれていた。


『父上、母上、ご無沙汰しています、ルークです。   俺は今ケセドニアにいます。ケセドニアにたどり着き、後は船に乗ってバチカルに行くというところまで来たのですが、突然旅の疲れか体調を崩してしまいました。なので、体調を回復させてからバチカルに戻ります。近い内に戻りますので心配しないで下さい』



手紙を読み終わると、ガイとアッシュの二人は揃って眉をしかめる。何も大した事は書いてないと二人は践んだようだ。表情を変えていないのはジェイド。
「何か分かりましたの?大佐?」
それを見たナタリアは何かわかったのかと質問を投げ掛ける。
「・・・はっきりと理由までは分かりませんがルーク、いやジューダスはすんなりとはバチカルに来る気はありませんね」
「・・・どういう事だ、旦那?」
「考えてもみて下さい、以前ケセドニアでルークは体調を崩しましたか?」
「・・・崩してないな」
「これは十中八九ジューダスの企てですよ。もちろんルークの体調が崩れた可能性がないとは言いきれませんが、その可能性は相当に低いです」
「だが・・・それで何故ケセドニアに止まるのか、その訳がわからんというのだな?死霊使い」
「えぇ、そうです。彼らは私達の先を行っていたのに、いきなり私達の後を追うような形に入っている。更にはまたケセドニアで時間を取ると伝えてきている・・・不可解過ぎて意図が読み取れないんです」
「ならば大佐、私達がケセドニアにルークに会いに行けばいいのではないですか?しばらくはケセドニアにいると言っているので、そうすれば・・・」
「それはやめておいた方がいいですね」
「どうしてだ、死霊使い?早く合流するならこっちから向かった方がいい。奴はいつ戻るのかわからんのだろう?」
「下手をすれば行き違いになります。今までの経験上有り得ない事ではないでしょう。やめておいた方がいいです」
「ならば俺が・・・」
「それもやめておいた方がいいですね。あなたは元々はルークに恨みを持っていた。そして今の時点ではあなたはルークと会ってすらいない。バチカルは元々の目的地だからいいですが、ここで六神将の任務を無視してまでケセドニアに行けば、あなたに他の六神将の監視の目がつきかねません」
「うっ・・・」
ここで監視がつけば動きをとりつらくなる、そうなるのはきついとアッシュは口をつぐむ。
「・・・ルーク達は近いうちに戻ってきます。そうなれば私達とともにアクゼリュス行きを言い渡されます。だから私達はここで待ちましょう、いいですね?」
ジェイドの言葉に全員頷く。今はバチカルで待つしかない、全員そう理解したため反論を返すものはいなかった。





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