救う者と救われるもの 第八話

(ちょっと雰囲気が怪しいなぁ・・・)
二人の会話を横で耳をすまして聞いていたアニス。
(大佐は確信出来ないって言ってるけど、絶対ルークはなんか訳があってケセドニアにいると思うんだけど・・・でもやっぱり大佐が言ったようにケセドニアにとどまる理由なんてないんだよなぁ)
アニスも話を聞いている間に理由を考えてはみたが、彼女にも思い浮かぶものが何もない。
(・・・でもルークが理由があってまだケセドニアにいるなら、なんでこんな回りくどい方法をとってるんだろう?)
ふとアニスが疑問に思う。ケセドニアにいるのが訳ありだとして、何故わざわざバチカルへの帰還に遅延する行動をとるのか?
(それに手紙を送ってきたって言ってるけど、ルークはあまり手紙を書くようなタイプじゃないんだよなぁ・・・)
今思い返せば手紙という物に、アニスは違和感を感じていた。ひとつひとつ状況を先に読みきった手紙を自分達が行くところ要所要所に配置してある。文章自体はルークが書いたものには間違いがないが、その気配りにはわざとらしさがどうしても匂ってくる。
(・・・あ~!!もう分かんないよ!!)
彼女なりに自己分析をしてはきたが、自分では説明しきれない部分がどうしても出てくる。
(後でガイから手紙の事を聞くしかないか・・・)
手掛りは今ルークから送られてきた手紙のみ、その中身を踏まえてジェイド達と話し合うしかないとアニスは結論つけた。





バチカル城に入り、謁見の間に向かうティア達。すると見覚えのある後ろ姿が見えてきた。
「モース・・・ですか?」
イオンが確認のために声をかける。バチカルに来たこの時に、ダアトの法衣を着た人物などイオンを除けば一人しかいない。
「・・・ど、導師イオン・・・!!」
予想通り振り返った顔は焦りの色をわかりやすく見せているモース。何故モースが謁見の間ではなく通路上にいるのか。それはディストの襲撃がなかったので、船の到着時間が定刻通り到着したため本来何もなかった場合の時間のズレが出たためである。
「ど、どうされたのですか?導師イオン。何故ここバチカルに・・・」
「僕はマルクトのピオニー陛下から請われて和平の仲介としてここに来ました。ですがあなたはどうしてここにいるのですか?」
「そ、それは・・・陛下にお話が・・・」
そこにジェイドが鋭く突っ込んでくる。
「そうですか、ならば一緒に謁見の間に行きましょう。ダアトからの仲介の使者として導師と大詠師二人が揃っているというなら、インゴベルト陛下もマルクトからの和平も信用してくれるでしょうから」
「わ、和平!?ま、待て私は・・・」
モースが先に入るにしろ、後に入るにしろどっちにしてもこの和平の話は預言を持ち出すモースのせいで無しにされる。ならばそれを踏まえて、少しモースを困らせてやろうとジェイドは同行しようと強制という名の誘いをする。
「いいじゃないですか。それともマルクトの使者の私には話せないような話なのですか?」
「・・・わかりました、私も一緒に行きましょう」
渋々といった様子が普通に分かるモース。表情だけでもう納得していないと言ってるようなものだ。
「それではセシル少将、案内をお願いします」
「・・・はい、わかりました」
少しこれでいいのかと思いながらも、セシル少将も了承を返して謁見の間に続く扉へと向かう。



「マルクトからの和平の使者と導師イオンをお連れした」
「ハッ!!連絡は聞いております。どうぞ、お通り下さい」
セシル少将と兵士の会話が終わると、謁見の間の扉が開かれる。以前にはいなかったセシル少将とモースを引き連れ、イオンを先頭として中へと入っていった。



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