救う者と救われるもの 第八話

A SIDE




「死霊使いは先に行ったと言っていたが、ケセドニアはもう越えている・・・ならばバチカルでルークに接触するしかないか・・・」
タルタロスの甲板の上で一人呟くアッシュ、彼はティア達よりケセドニアに先にたどり着いていたが、ルークを見つける事は出来なかった。仕方ないので、バチカルでヴァンや他の六神将よりも先にルークを見つける事にしようとアッシュは考えていた。
「・・・あれは・・・」
アッシュの視線の先に現れたのはアリエッタ、丁度いいと思ったアッシュはアリエッタに近付く。
「おい、アリエッタ。頼みがある」
「え・・・何ですか?」
「フレスベルグを俺に一匹貸せ、俺は先にバチカルに向かわせてもらう」
善は急げとばかりにアリエッタの友達を貸せというアッシュ。彼の直情的な所は過去に戻ってきてもあまり変わらないようだ。
「え・・・でも、リグレット達にはどう言う、ですか?」
「知った事か、俺は先に向かう。いいから早くフレスベルグを貸せ」
「・・・わかった、です・・・」
強い態度にでるアッシュにアリエッタが反論出来る筈もなく、渋々といった表情で近くにいたフレスベルグを手を上げてこちらに呼び寄せる。近くに来たフレスベルグの足を取ると、アッシュはさっさとバチカルの方へと飛びさっていった。
「・・・アリエッタがリグレットに伝えなきゃいけない、ですか?」
その場に残されたアリエッタは、状況を彼女なりに把握し終えると自分がリグレットに話すしかないという結論にいたり、困り顔でリグレットのいるブリッジに向かっていった。




N SIDE



「叔母様、具合はいかがですか?」
「えぇ、大分よくなりました・・・」
ファブレ公爵邸でベッドの上にいるシュザンヌを見舞いに来ているナタリア。
「けど、ルークは大丈夫でしょうか・・・」
「大丈夫ですわ、叔母様。ルークは無事に戻って来ますわ」
シュザンヌがベッドの上で体調を崩している理由はルークがいないことから来る心労、それを理解しているナタリアは懸命にシュザンヌを励ます。



ナタリアが過去に戻ってきた時、彼女は城の中にいた。最初彼女は戻って来たとき、自らルークを迎えに行こうと思っていた。しかしこの時はルークがいなくなった騒ぎで城は騒然としていて、自らがルークのところに行くなどとは言えなかった。そこでナタリアは以前の流れの通りに行けばここバチカルでルークに会えると思い、残っておくことにしておいた。
(ルーク・・・早く戻って来て下さいまし)
シュザンヌを気遣いながらも、ルークの一刻も早い帰還を願うナタリア。ルークが帰ってくるのか分からない当てのない時間から一転、今この時にルークがいる。ナタリアもまた待つ時間を過ごしてきた身、ティア達と違い自分で探しにいけない歯がゆさを感じながらも、もう少しでルークに会えるとナタリアは自分自身に言い聞かせた。






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