救う者と救われるもの 第一話

「・・・ん・・・ここは・・・セレニアの花?ならここはタタル渓谷?」
ルークが横たわったまま目を覚ますと目の前にはセレニアの花があった。更に周りの感じで潮風が吹いていることから、ユリアシティではなくタタル渓谷なのだとルークは確信した。
ふとルークが体を起こして周りを見回すと意識を失っているティアが目に入り、途端にルークに申し訳無さがこみあげてきた。
(ごめん皆、俺もう戻れない。約束守れなかった)
生きて帰ると仲間に約束した、だが存在している時間が違うためルークには『必ず帰る』という約束が果たせなくなってしまった。
(許して欲しいなんて言わない・・・だから俺は俺に出来る事をやるから)
ごめんなさい、そうルークは呟きティアに深く頭を下げた。


『ルークよ・・・』
頭を上げたルークの目の前にローレライが現れた。
『我は元居た時間に戻らねばならぬ。本来ならそなたに付いていき、手伝いたい所ではあるのだが・・・』「いや、いいよ!!そんな!!俺の事を思って俺を過去に送ってくれたのに、そんな・・・」
ルークは非常に申し訳無さそうな表情でローレライに首を振りながら答える。
『だか手助けはしたいと思う。だからこの指輪をルークに授けよう』
その言葉と同時にローレライからソーサラーリングの縮小版といった感じの指輪がルークに飛んできた。
「・・・これは?」
『この指輪は我の第七音素を凝縮して作ったものだ。ルークの望み一つでその使用用途を変え、そなたの旅を手伝う。我の代わりと思い受け取るがいい』
「ありがとう、ローレライ」
礼を言ったルークはその指輪を左手の人指し指にはめこみ、「うん!!」と指輪をはめた確認を満足気に行った。


『そろそろ我は戻るが一つ伝えておかなければいけないことがある』
「え?」
『時空移動の際に巻き込む形でこの世界に来てしまった者がいる』
「・・・どういうことなんだ?」
『時空移動を行う際には異次元空間を通らねばならん。本来なら異次元空間には人は存在してはいないのだが、何故かは分からんがその者は確かにあの空間にいたのだ』
「巻き込んでしまったって事は・・・その人は今ここにいるってこと?」
『そういうことだ。ただ、巻き込まれた形で時空移動に不安定にその者が乗っかってしまったため、ここから少し離れた場所に落ちてしまった』
「そんな・・・じゃあ俺が過去に戻りたいって言ったからその人は巻き込まれたって事なのか!?」
『先程も言ったであろう。本来異次元空間に人は存在する筈がないと。その者が何故あの場にいたのかということがわからない以上あれは事故だ。必要以上に気を落とすな、ルークよ』
「・・・じゃあどうしたらいいんだ?ローレライ」
『この時間帯の我に頼め。その者の処遇も含め本人に事情を聞き出さない事には話にならんがな』
「・・・わかったよ、ローレライ」
『うむ、ではさらばだ』
その言葉を最後にローレライは光の中へ消えて行ってしまった。

「ううん・・・」
その直後意識を取り戻したティアが体を起こし、少し気だるげに声をあげた。
(あ・・・ティア・・・そうだ、ティアと話さなきゃ)
あの時とは逆に自分が先に起きている。その事に少し違和感を感じながらルークはティアに近付いて声をかけた。
「大丈夫か?ティア」



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