救う者と救われるもの 第七話

その後、ルーク達を邪魔をするような存在もいなかったため、住民の避難は思っていたよりもスムーズに進める事が出来た。その事にルーク自身で想像してはいたが、予想以上の効率の良さに改めてジューダスに感謝していた。
(俺一人だったらここまで出来なかった・・・。こんなこと思っちゃいけないけど、ジューダスがいてくれて良かった・・・)
自らの想いの為にここに来てしまったジューダスに引け目を感じてはいるが、彼が自分と行動を共にしてからは想っていた事が現実になりつつあっている。ジューダスの思考、ジューダスの発言、ジューダスの行動。何をとってもジューダスに助けられている。
(ジューダスは俺に協力してくれているんだ・・・絶対に成功させる・・・!)
まだ不甲斐ない自分には全てを最高の形で終わらせる事がジューダスに報いる唯一の方法、そう理解しているルークは住民の救護をただただ全力で行っていった。




時がたち夕暮れに近い時間帯のころ、ルーク達は第十四坑道の中にいた。住民の救出は坑道内のもう動く事すら出来ない人物から優先で行っている。十四坑道はルーク達の担当場所だ。
「よし、ここにもう住民はいないな。次に行くぞ」
「うん」
セフィロトに続く扉の前で、住民の有無の確認をし終えたジューダスの言葉でルークも早く坑道から出ていこうとした。
「・・・?」
するとルークは何か戸惑いの表情で、動かそうとしていた足を止める。そしてルークは何故かセフィロトの扉に立ち、更に戸惑いの表情を強めた。
「どうした、ルーク」
自分についてこないルークに気付いたジューダスは、ルークのところに戻ってきた。
「いや、ちょっと・・・「ここにおられましたか、ルーク様!!伝令です、アルマンダイン伯爵から鳩が届きました」
戸惑いながらも、返事を返そうとしたルークの声に兵士の伝言の声が坑道の中になり響いた。
「あっ・・・行こうジューダス、俺の事は大した事じゃないから・・・」
「・・・なら行くぞ」
兵士の言葉でルークは気のせいだと、自らの心に芽生えたものを勘違いだと思う事にして早く坑道から出ようとジューダスに促す。ジューダスもそれに従い、先に元来た道を戻って行った。ルークももう一回だけ扉をチラッとだけ見ると、ジューダスの後を追うようにさっさと戻って行った。




アクゼリュスの入口にルーク達が戻ると、兵士がルークに近付き手紙を渡す。ルークはその手紙を開き、隣のジューダスと真面目な表情で黙読していった。
『ルーク様へ   ヴァン謡将、ならびに導師イオン率いる和平一行は何事もなく無事に港を出発されました。わかっておられるとは思いますが、すぐに港までおこしく下さい』
手紙を読み終えると、ルークは近くの兵士に視線を向けて言い放つ。
「俺達はもう港に戻らないといけないので、後はよろしくお願いします」
「かしこまりました!」
敬礼を返す兵士の姿に軽く一礼をとると、ルーク達は急いでその場から去っていった。



「ゆっくりしている暇はないぞ、ルーク。ここから港まで休憩なしで行く。根をあげるな」
急ぎながらも、ルークを気づかい心を奮い起たそうとさせるジューダス。
「大丈夫、俺の事は心配しなくていいよ。ここからがもっと大事な時だからへこたれてなんかいられない・・・!!」
はや歩きのスピードを維持しながらも、ジューダスに答えるルーク。
「フッ、聞くだけ無駄だったな」
軽く口元を柔らかく笑わせ、ルークを横目で見る。
(・・・やはりスタンやカイルと同類だな、前しか見ていない)
改めて見ると表向きの性格や見た目は違うが、内面の芯は似ているとジューダスは感じていた。
(全く・・・僕にはこういうやつらしか周りにはこんのか)
とはいっても、表情には以前とは比べ物にならない程に表情が柔らかくなっている。なんだかんだ言ってもルークに協力したいと自ら思っている自分もいたため、内心で恥ずかしいと思い自分自身の中だけで憎まれ口を叩いて自分の気持ちをジューダスは誤魔化していた。




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