救う者と救われるもの 第七話
「後少し・・・後少しでアクゼリュス・・・」
兵士達の先を行くルークの顔は必死さと痛々しい程の悲壮さが入り混じっている。
「焦るな、ルーク」
「ジューダス・・・」
「アリエッタがここに来た事で流れは変わったと自分でも確認しただろう。別の流れは既に出来つつある。あまり気負うな」
「うん・・・」
不思議とジューダスの言葉を聞くと安心する、ルークはそう思っていた。先程までの表情が嘘のように、今はわずかではあるが笑顔でいれている。
「・・・なぁ、ジューダス。聞いていいか?」
この安心感の理由を知りたいルークは、それをジューダスに聞いてみる。
「・・・なんでジューダスはそんなに前向きでいられるんだ?」
何か表現にどことなく誤りがあるとは思ってはいるがこう聞くしかなかったので、ルークはこの質問をジューダスに投げ掛けた。
「前向き・・・か・・・ふっ、昔の僕からは考えられん言葉だな」
過去を思いだし、軽く笑みを見せるジューダス。
「・・・前に話しただろう、僕はスタンというヤツと戦い命を落としたと。僕はそのスタンと出会うまである二人を除いては、誰も信用していなかった」
「え・・・?」
「僕はある男の元でそいつの駒になるよう、育てられていた。そんな環境で僕が信用していたのはマリアンとシャルティエという二人だけだった。そんな僕の前に現れたのがスタンだ。あいつは率直に言えば当時の僕が一番嫌いなタイプだった。図々しくて脳天気で馴れ馴れしいヤツ、第一印象から僕とは絶対に合わない、そう思っていた」
「思っていた?」
「ヤツと旅をしていく内に、知らず知らず僕はスタンを認めていた。その時は僕もまだ子供だったから素直には認めなかったがな」
「子供って、俺と見た目の年齢はそんなに変わらないけど・・・」
「・・・話を続けるぞ」
(あっ流された・・・)
「スタンとの旅を終えた僕に待っていたのは、ヒューゴという僕を駒として育てた男がマリアンを人質にとっている姿だった」
「人質!?」
「ヒューゴは僕に、マリアンを助けたければスタン達を足止めしろと言ってきた。自らの理想の為にはヤツラが邪魔だからと。そして僕が選んだのはスタン達と戦う事だった」
「それで・・・ジューダスは負けたんだ・・・」
「あぁ」
「でもなんで・・・なんで、ジューダスはスタンって人と戦う事を選んだんだ?」
「マリアンの幸せこそが僕の全て、そう思っていたからだ。だがスタンと戦った事を心のどこかで無自覚に悔いていたのだろう、その悔いを察知して僕の前に現れたのがエルレインだ」
「神の・・・分身・・・?」
「ヤツは使える手駒を探していた、僕のような過去に傷をもつ者をな。だが僕はまやかしの幸せなどいらんと、僕はそれを断りエルレインの元を去った。そしてかつて僕が住んでいた場所に戻った時そこにいたのがスタンの息子、カイルだ。僕はスタンにそっくりなカイルを見て、放ってはおけんとカイルの手助けをすることにした・・・結果的には僕が助けられる形になったがな」
「・・・どうして?」
「お前の言う前向きさがスタンとカイルにはあった。スタンとは途中で道を違えた、だがカイルとは最後まで旅を続ける事が出来た。カイル達と旅を続けていく内に、僕はスタン達との失った時間と同等の時を過ごせた。それと同時にカイルの前向きさに感化されていった。以前の僕とくらべれば前向き過ぎて笑えてくるくらいにな」
柔らかい微笑を浮かべながら話すジューダスに、本当の事なんだと理解するルーク。
「・・・ジューダス、どうして昔の事を話してくれたんだ?昨日はなんか話すの嫌がってたのに・・・」
しかし昨日ベッドの中で話した会話からは明らかに昔を話す事を避けていたため、ルークはどうしたのかと思っていた。
「・・・簡単な事だ。僕はお前の過去を知っていて、お前は僕の過去を知らない。今思えばこれは公平ではないと思ったから、だから話しただけだ」
「・・・あっ、そういう事か・・・」
確かに指輪の力でジューダスは過去を見たと言っていたが、ルークはその場面に居合せた訳ではない。ルークはその事を忘れてた。
「・・・昔話はこれくらいにするぞ、アクゼリュスが見えてきた」
「・・・あっ・・・うん、そうする」
話を続けていく内に、障気に淀んだ空と下に掘り下げられた鉱山の街アクゼリュスが見えてきた。ジューダスの言葉でそれを確認したルークは、表情を引き締めて前を見据えた。
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兵士達の先を行くルークの顔は必死さと痛々しい程の悲壮さが入り混じっている。
「焦るな、ルーク」
「ジューダス・・・」
「アリエッタがここに来た事で流れは変わったと自分でも確認しただろう。別の流れは既に出来つつある。あまり気負うな」
「うん・・・」
不思議とジューダスの言葉を聞くと安心する、ルークはそう思っていた。先程までの表情が嘘のように、今はわずかではあるが笑顔でいれている。
「・・・なぁ、ジューダス。聞いていいか?」
この安心感の理由を知りたいルークは、それをジューダスに聞いてみる。
「・・・なんでジューダスはそんなに前向きでいられるんだ?」
何か表現にどことなく誤りがあるとは思ってはいるがこう聞くしかなかったので、ルークはこの質問をジューダスに投げ掛けた。
「前向き・・・か・・・ふっ、昔の僕からは考えられん言葉だな」
過去を思いだし、軽く笑みを見せるジューダス。
「・・・前に話しただろう、僕はスタンというヤツと戦い命を落としたと。僕はそのスタンと出会うまである二人を除いては、誰も信用していなかった」
「え・・・?」
「僕はある男の元でそいつの駒になるよう、育てられていた。そんな環境で僕が信用していたのはマリアンとシャルティエという二人だけだった。そんな僕の前に現れたのがスタンだ。あいつは率直に言えば当時の僕が一番嫌いなタイプだった。図々しくて脳天気で馴れ馴れしいヤツ、第一印象から僕とは絶対に合わない、そう思っていた」
「思っていた?」
「ヤツと旅をしていく内に、知らず知らず僕はスタンを認めていた。その時は僕もまだ子供だったから素直には認めなかったがな」
「子供って、俺と見た目の年齢はそんなに変わらないけど・・・」
「・・・話を続けるぞ」
(あっ流された・・・)
「スタンとの旅を終えた僕に待っていたのは、ヒューゴという僕を駒として育てた男がマリアンを人質にとっている姿だった」
「人質!?」
「ヒューゴは僕に、マリアンを助けたければスタン達を足止めしろと言ってきた。自らの理想の為にはヤツラが邪魔だからと。そして僕が選んだのはスタン達と戦う事だった」
「それで・・・ジューダスは負けたんだ・・・」
「あぁ」
「でもなんで・・・なんで、ジューダスはスタンって人と戦う事を選んだんだ?」
「マリアンの幸せこそが僕の全て、そう思っていたからだ。だがスタンと戦った事を心のどこかで無自覚に悔いていたのだろう、その悔いを察知して僕の前に現れたのがエルレインだ」
「神の・・・分身・・・?」
「ヤツは使える手駒を探していた、僕のような過去に傷をもつ者をな。だが僕はまやかしの幸せなどいらんと、僕はそれを断りエルレインの元を去った。そしてかつて僕が住んでいた場所に戻った時そこにいたのがスタンの息子、カイルだ。僕はスタンにそっくりなカイルを見て、放ってはおけんとカイルの手助けをすることにした・・・結果的には僕が助けられる形になったがな」
「・・・どうして?」
「お前の言う前向きさがスタンとカイルにはあった。スタンとは途中で道を違えた、だがカイルとは最後まで旅を続ける事が出来た。カイル達と旅を続けていく内に、僕はスタン達との失った時間と同等の時を過ごせた。それと同時にカイルの前向きさに感化されていった。以前の僕とくらべれば前向き過ぎて笑えてくるくらいにな」
柔らかい微笑を浮かべながら話すジューダスに、本当の事なんだと理解するルーク。
「・・・ジューダス、どうして昔の事を話してくれたんだ?昨日はなんか話すの嫌がってたのに・・・」
しかし昨日ベッドの中で話した会話からは明らかに昔を話す事を避けていたため、ルークはどうしたのかと思っていた。
「・・・簡単な事だ。僕はお前の過去を知っていて、お前は僕の過去を知らない。今思えばこれは公平ではないと思ったから、だから話しただけだ」
「・・・あっ、そういう事か・・・」
確かに指輪の力でジューダスは過去を見たと言っていたが、ルークはその場面に居合せた訳ではない。ルークはその事を忘れてた。
「・・・昔話はこれくらいにするぞ、アクゼリュスが見えてきた」
「・・・あっ・・・うん、そうする」
話を続けていく内に、障気に淀んだ空と下に掘り下げられた鉱山の街アクゼリュスが見えてきた。ジューダスの言葉でそれを確認したルークは、表情を引き締めて前を見据えた。
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