救う者と救われるもの 第七話

「・・・ごめん、俺すっごく長く泣いてたよな?」
そう言いながらも、ルークの目元はまだ若干赤いままである。
「気にするな、五分程度くらいだ」
「大丈夫、です」
確かに時間的にはそのくらいだが、何故かジューダスとアリエッタの距離が最初からなかったかのようになっている。とは言え実質初対面なので、アリエッタは好きな人種ならば警戒心を捨て去るからある意味当然でもある。ジューダスもルークの記憶でそういう子だと理解しているので、反発はしない。
「ルークも落ち着いたところで改めて聞くが、クイーンの礼を言いに来たのか?お前は」
話が出来る雰囲気になったので、ジューダスはアリエッタに聞く。
「はい、そうです。タルタロスに乗ってたらこの子達が来てあなた達の事を教えてくれた、です」
「タルタロス!?なぁ、アリエッタ。タルタロスの中はどうなってた!?」
タルタロスの単語が出た瞬間、ルークがアリエッタに勢いよく問いかける。
「タルタロスの中は誰もいませんでした。それでリグレット達、凄く不思議がってた、です」
「そうか、よかった・・・ジェイド俺の手紙を信じてくれたんだ・・・」
まさか自分達だけじゃなくジェイド達も戻って来ていることを知らないルークは、嬉し涙をつけた安堵の笑みを浮かべた。
「どうした、ですか?」
「いや、なんでもない。こっちの事だ、気にするな・・・この子達と言っていたが、まさか僕達がクイーンに礼がわりにとつけてくれたライガ達か?」
「はい、そうです」
そう言われてライガを見てみると、その二匹から感じるのは敵意ではなく柔らかい敬愛の意。
「この子達、ママを助けてくれたこと説明してくれた、です。だからアリエッタ、二人にお礼を言いたかった、です」
「そうか・・・」
他意のない言葉を、素直に受け止めるジューダス。しかしここで時間をくう訳にはいかないと、ジューダスは別れを切り出した。
「礼は言い終わったか?終わったのなら僕達は行かなければいけないところがある。出来ればここでお別れにしたいのだが・・・」
このまま時間をくえば予定していた流れが無駄になる、そう思ったジューダスはアリエッタに困惑の表情を作りながら早く帰ってもらおうとしていた。
「行くです、か?」
「・・・あぁ」
「なら・・・仕方ない、です」
寂しそうながらも、ジューダスの言葉を受けてライガに再びまたがるアリエッタ。
「あぁそれとここで僕達と会った事は秘密にしておいてくれ。特に六神将の面々には絶対に内緒にしてくれ。いいな?」
「・・・?・・・わかった、です」
なんでだろうと首を傾げながらも、了承をジューダスに返すとアリエッタはまた来た方向に向き直って颯爽と帰って行った。
「・・・なぁ、ジューダス。変わってるよな?」
「・・・それは一番お前が感じているだろう。僕に聞くまでもなくな」
「・・・うん」
アリエッタの後ろ姿をジッと見つめながら話す二人、変化を目の当たりにしたルークには光明が見えはじめていた。




「・・・話は変わるが兵を残すのはここらでいいだろう。もう峠の出口は近いのだからある程度開けた場所の方がいい筈だ」
「あっ、そうだ・・・皆、ちょっと集まって下さい!!」
そのジューダスの言葉に、ルークは周りに散らばらせていた兵士達を集めさせる。全員が隊列を組むのを見ると、ルークは真面目な表情で兵士達に話だした。
「打ち合わせ通り、ここで人数を半分に分けます。待機組はこの辺りでしばらく待っていて下さい」
「「「「はっ!」」」」
「残りの人達は引き続きアクゼリュスに俺と向かいます。じゃあ行きましょう!」
「「「「はっ!」」」」
ルークはそういうと、足取りを少し早めてアクゼリュスへの道を再び歩き出して行った。





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