救う者と救われるもの 第六話

「・・・成程、アッシュは先に行ったんだ~」
「・・・えぇ、正直助かったわ」
「でもちょっと思ったんだけどルーク達ってどのくらい先に行ったのかな?」
「兄さんはほんのちょっと前に抜けたって言ってたから、今頃はケセドニア辺りじゃないかしら・・・」
「うーん、やっぱりそれくらいかぁ~・・・あっ、港が見えてきた」
アニスが指を指すと、ティアの視界にも港が見えてきた。




「・・・妙ですねぇ」
その後程無くして港に着いたティア達。しかし以前とは違う違和感をジェイドが口にする。
「何か兵士の人数が少ないと思うのですが・・・」
アリエッタの襲撃がない今、この軍港は無傷の状態の筈だ。だが港の兵士の人数は最低限しか置いていないように少ない。
「・・・どういうことなのでしょうか?」
イオンもこの状態が変だと気付いたようで、ジェイドの意見に賛同してきた。
「考えても仕方ない。奥に行こうぜ」
「そうですね。先に行きましょう」
ガイがそこに行かなきゃ分からないと促し、イオンはそれに同意する。



そのまま港の先に進むと、待ち構えていたかのようにヴァンとアルマンダイン伯爵が兵士を後ろに従えて立っていた。
「・・・おぉ、導師イオンであられますか!!私この港の責任者のアルマンダインと申します!!」
するとイオン達に気付いたアルマンダインが満面の笑みを浮かべ、近寄ってきた。
「お話は謡将からおうかがいしております。導師はキムラスカとマルクトの和平に向かうとの事で」
「はい、そうです」
「キムラスカには既に鳩を飛ばしておきました。船も用意しておりますので、今からでも出発できます」
おかしい、そう思ったのはジェイドだった。
「失礼、アルマンダイン伯爵。よろしいでしょうか?」
「・・・どうなされたのですか?」
「私はマルクト軍第三師団長ジェイド・カーティス大佐です。質問していいでしょうか」
敢えてここで自分の名をさらしてみる、以前と同じならここで友好的な態度が一変する筈だとジェイドはカマをかけてみた。
「・・・カーティス大佐とは死霊使いジェイドのことか。その死霊使いが何か私に聞きたい事でも?」
あまりよく思っていない返事の返しかた、ジェイドは勘違いかと思いながらもアルマンダインと向き直って話し合う。
「ここにいる兵士の人数はこれほどだけですか?港というからにはもう少しいるかと思われるのですが」
「あぁその兵士達はルーク様の護衛に回しました」
「護衛・・・ですか?」
「ここから船に乗ればケセドニアまで一直線です。ですが船旅とは言え傭兵一人にルーク様の御身を守らせる訳にはいきませんので、安全を確保するために護衛につけました」
「・・・そうですか」
何か釈然としないが、納得の返事を返すジェイド。
(確かにアルマンダイン伯爵は以前のまま・・・もしアリエッタの襲撃がなければ、今のように私がひとにらみされるだけで終わっていたでしょう。ですが・・・何だ、このひっかかりは・・・?)
どこかで何かが抜け落ちている、ジェイドはそう思っていた。
「導師イオン、今から船に乗られますか?」
そんな迷っているジェイドにはお構い無しにアルマンダインはイオンに出発するかどうかを聞いてくる。
「僕はそれで構いませんが皆さんはどうですか?」
「・・・はい、私も構いません」
しかしはっきり何かおかしいと言える要素もないので、ジェイドは内心渋々ながらも出発に同意した。



結局、イオンの言葉でヴァンも含めた全員がケセドニアへ向かう船に乗って港を後にしていった。
その船の後ろ姿を見送ったアルマンダインは、船が見えなくなると近くの兵士に視線を向けながら話す。
「ルーク様達に鳩を飛ばせ。成功だと」
「了解しました」
アルマンダインの命令に兵士は急いで鳩を飛ばしにむかいに行った。





全ては回る、例え知ろうと知らなくとも。回る時を全てを知ろうとすることは最初から無理なのだから




next story




10/11ページ
スキ