救う者と救われるもの 第六話

T SIDE



セントビナーの宿で一泊した後、朝早くからカイツールへと出発したティア達。昼下がりの今、ティア達はフーブラス川に差し掛かっていた。



「ここを越えればカイツール・・・兄さんがいる・・・」
歩いている中で、独り言を真面目な顔で呟くティア。親愛の情は道を違えた今でも失ってはいない。その兄が今カイツールにいる事がティアにまた責任感が芽生えてきていた。
「気負いすぎですよ、ティア。顔が怖いです」
「大佐・・・」
その表情を見たジェイドがティアに近付き、話しかける。
「心配しなくても大丈夫ですよ、カイツールで私達はヴァン謡将と戦う必要はないんですから」
「・・・そうですね」
今は戦わずともよい、まだ兄は今は危険な本性を出していない。とはいえ兄が暴走を本格的に始めないように早く止めたい、だからカイツールで止めよう、そういった気持ちがティアにあった。
(焦っては駄目・・・)
そう自分にいい聞かせる。まだ時間はあるのだから大丈夫。何度もそう心で唱えながら歩いていった。



「そろそろ・・・ですね」
川を渡り、少し開けた場所へと出た時、ジェイドは呟いた。
「・・・アリエッタ!」
颯爽と前からライガに乗ったアリエッタがこちらに走ってきた。アリエッタはこちらから少し距離を取り、ライガから降りる。
「イオン様・・・」
「アリエッタ・・・」
互いに神妙な顔をしながら向き合う二人。そんな状況の中、先にイオンが言葉を放った。
「アリエッタ・・・僕達は和平に向かわなければいけないのです。あなたなら分かりますよね?戦争を起こしてはいけないと」
「う・・・」
一歩後ずさるアリエッタ。やはりイオンの言葉は絶大なようだ。
「お願いです、アリエッタ。ここを通して下さい」
「・・・はい、わかったです・・・」
イオンの言葉に観念したアリエッタはライガにまたがりカイツールの方へ退いていった。
「よかった・・・」
二人のやりとりを黙って見ていたアニスがぽつりと安心したかのように呟く。
(アニス・・・)
表面上はどうあれ、やはりアリエッタとの争いをアニスが望んでいる筈がない。前はすれちがいのままに終わってしまったが、今回はアニスとアリエッタは仲良くなれるかもしれない。ティアはそう思っていた。
「確実に変わっていってるな・・・」
「ええ・・・」
以前との変化、それを実際に目の当たりにしたティア達はこれならいい方に変えていける。そう思っていた。しかしそれと同時に、
「私達もルークを手伝いたい・・・」
早くルークと合流を果たしたい。ルークと共に歩みたいという気持ちがティア達の中でまた強くなっていった。





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