救う者と救われるもの 第六話

「それではルーク様、私は何をすればよろしいのでしょうか?」
これからの事をアルマンダインが聞いてくる。それを受け、ルークは頭を上げて説明を開始した。
「これから俺達はアクゼリュスに向かいます。そこで港の兵を俺達に同行させて下さい」
「・・・アクゼリュスへルーク様が向かわれるのですか?」
「・・・うん、これは必要な事なんだ」
「・・・分かりました、兵をお貸し致しましょう」
アクゼリュスの人達は自分が助けたい、その気迫がアルマンダインにも伝わってきた。そのルークの意気に答える為、アルマンダインは了承の意を返した。
「それとヴァン師匠達が来たら俺は先にバチカルに戻ったと伝言して下さい。アクゼリュスに向かったって師匠に知られるとまずいことになるので・・・」
「何故ですか、ルーク様?このまま素直にここを通すより、ヴァン謡将を捕まえてしまえば後々楽になるかと思いますが・・・」
そのアルマンダインの言葉にうっ、と詰まるルーク。あまり説明が得意ではないルークはどうしようかと、ジューダスをチラッと見る。
「・・・失礼、アルマンダイン伯爵。よろしいでしょうか?」
ルークの様子から自分の出番だと、ジューダスが一歩前へ出た。
「君は?」
「ジューダスは俺に協力してくれているんです。ジューダスの言葉を聞いてくれませんか?」
「はい・・・ルーク様がそう仰るなら・・・」
「ありがとうございます・・・ここでヴァン謡将を捕縛すれば、六神将を始めとするヴァン謡将派の神託の盾が我々の行動の意図に気付くきっかけになるかもしれません。また、ヴァン謡将がキムラスカ領でキムラスカ兵に捕えられたとなれば国際問題になりかねません。それにまだ、今はヴァン謡将は何も行動を起こしていません。仮に捕えたとしても証拠不十分ですぐに釈放となるでしょう」
「ううむ・・・」
「ここで必要なのは我々がやろうとしている事を気付かせない事です。ヴァン謡将には順調にルーク様はバチカルに戻ったと印象づけられればこれからの我々の行動が自由になります」
「その役目を私が負う訳か・・・」
「そういう事です」
「成程・・・よく分かりました。このアルマンダイン、喜んでこの任を承らせていただきます」
立て板に水を流すようなジューダスの説明に、聞く前までは晴れなかった顔が今は清々しくなっている。
「しかし今から出発してもすぐに夜になります。今日はこちらで休まれて明日の朝に出発されて下さい」
「そうします」
アルマンダインとの打ち合わせを終えた二人はドアを開け、仮眠所へと向かって行った。




「明日・・・か・・・」
「早く寝ておけ、睡眠不足で倒れる事がないようにな」
ベッドの布団の中で、会話をする二人。



「ジューダス・・・聞いちゃいけない事だと思うけど聞いていい・・・?」
「・・・何だ?」
「・・・英雄のスタンって人とはなんで戦ったんだ・・・?」
ルークはあまりジューダスは過去を言いたくなさそうだとは感じていた。しかしルークはジューダスが悪人であるとは全く思えない。何故という疑問はルークの中で収まる事はなく、思いきって聞いてみることにしたのだ。
「・・・僕は大切な人を守る為にスタンと戦った、それだけだ・・・」
「え?ジューダス・・・」
「・・・もう寝ろルーク」
そう言うと、ジューダスはルークに背中を向け話をすることを拒否しているかのような体勢に入った。
(ジューダス・・・)
無理に聞きすぎたのかも、と反省するルーク。
(・・・寝よう。ジューダスの言った通り睡眠不足で倒れたら迷惑だもんな)
気まずくなった雰囲気ではあるが、今は眠って鋭気を養う事が重要。ルークもジューダスにならって静かに目を閉じた。






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