救う者と救われるもの 第六話

「でもジューダス、どうしてあんなに綺麗に礼を取ることが出来たんだ?」
「・・・僕は元々は王国に従属している客員剣士だった。ある程度の応対の儀礼は心得ている」
ヴァンとのやりとりに見せた丁寧な言葉使いに、ジューダスの事を知らないルークは素直に聞く。
「・・・とりあえずは無事にカイツールを抜ける事が出来た、後は港でアルマンダイン伯爵に会うだけだ」
(あっ、ジューダス・・・何か・・・寂しそう)
自らの事を話した後、わざとらしく話題を変え足を早めたジューダス。先を行く前に、少しチラッと見えた顔は凄く寂しそうだとルークは感じていた。



夕方程になり、港に着いた二人。二人は真っ直ぐに港の中の軍基地に入っていった。



「すみません、アルマンダイン伯爵はいますか?」
「・・・もしやルーク様ですか!?」
「はい、そうです」
「大変失礼致しました!!只今伯爵をお呼び致します!!」
力の入った敬礼をルークに返し、奥の部屋に行こうとする兵士。
「あ、俺から行くから部屋にはアルマンダイン伯爵だけにしてもらっていいですか?内密に話があるんです」
「は、はい。かしこまりました」
するとルークは兵士を呼び止め、密談の形を取れる体勢を望む。兵士はそれを受け、基地の奥の部屋へと消えていった。
「これでいい・・・」
「うん・・・」
小声で会話をする二人。
「・・・お待たせしました、アルマンダイン伯爵が中でお待ちです」
「分かりました」
返事を返すと、兵士が開け放っているドアの向こうに二人は入っていった。



「おお、ルーク様!ご無事で何よりでございます!」
両手を横に広げ、満面の笑みで向かえるアルマンダイン。
「こちらに戻って来て下さると連絡がございましたら盛大にお迎えしたのですが・・・」
「いえ、ちょっと事情があってあまり派手じゃない方が丁度よかったんです」
「事情?事情とは?」
「すみません、ちょっと待って下さい。今から説明しますので」
アルマンダインの疑問に、突然ルークが真剣な顔をしながら何かを念じだした。その表情に何が起きるのかと、アルマンダインは眉をひそめながら黙って待っている。




‘カッ’
「なっ!?」
するとルークの指輪が光だし、光がアルマンダインを包む形になっていった。包まれる直前、いきなりの未知の現象にアルマンダインの表情は戸惑いに満ちていた。



完全にアルマンダインが光に包まれると、ルークはその光球を見ていたたまれない表情になっていた。
「こんなやり方でよかったのかなぁ・・・」
「口で説明しても納得など出来ん、あれは。百聞は一見にしかず、だ」
事前の打ち合わせでは言葉での説明は不要だと、ジューダスがさっさと指輪の力で理解させる方法を選んだ。しかしあのアルマンダインの表情を見たルークは、少し申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。



やがて光も収まり、指輪に光が戻ると戸惑いから混乱の表情にランクアップしたアルマンダインが残されていた。
「ル、ルーク様・・・今のは一体・・・」
「アルマンダイン伯爵・・・今のはローレライからもらったこの指輪の力です。今見たものはこれから起こる事なんです。預言に頼ればこの星の人達は絶滅してしまうんです」
「・・・これは本当の事なのですね・・・」
いきなり起こった超常現象に、納得せざるを得ないアルマンダイン。嘘というにはあまりにリアル、否定するには理屈では否定しきれない何かをアルマンダインは感じた。
「この未来を回避するにはアルマンダイン伯爵の力が必要なんです。協力して下さい、お願いします」
頭を下げるルーク。頭に流れてきた映像にはこのルークはレプリカという存在だという事もあった。しかし、そんなことはアルマンダインには関係なかった。
「分かりました、ルーク様。このアルマンダインに協力出来る事があれば何でも言いつけ下さい」
世界の危機、更には失われなくてもいい命をむざむざと失う訳にはいかない。アルマンダインはルークに協力するべきだと決心したのだ。
「・・・ありがとうございます」
信じてくれて、という感謝を含めルークは改めて頭を下げた。





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