救う者と救われるもの 第五話

ジェイドの一言により一層ティア達は表情を暗くする。表情だけでそうだと言っているようなものだ。
「旦那・・・やはりってどういう意味だ?」
その言葉に反応したのはガイ。ルークに会えないというショックもガイにはあるが、それ以上にジェイドの言葉の意味が知りたいのか表情を険しくしている。
「・・・それはセントビナーに入ってから話させていただきます。すみません、私達も馬車に乗せていただいてよろしいでしょうか」
「はい、いいですよ」
「旦那!!何で・・・」
ガイはまだ抗議をしようとしていたが、ジェイドの強い視線を向けられ黙殺されてしまい、黙って馬車の中へと入って行った。



それからセントビナーに入ると、ジェイドは事情説明の為にマルクト軍の基地へと一人で行ってしまった。現在ティアとガイは宿の部屋の一室で中で話し合っている。アニスはイオンが疲れ気味との事で様子を見るため、席を外している。
「・・・そうか、ティアがエンゲーブに着いた時にはルークはいなかったんだな」
「えぇ・・・」
「くそっ、何で俺達を頼ってくれなかったんだ!」
「・・・ジューダスという人物の考えでしょう」
怒り心頭のガイの声に、軍に事情を説明し終わり戻ってきたジェイドが加わってきて答える。
「ガイ、ルークはまずこんな事を考え付きません。一番ルークと長く付き合ってきたあなたです。そうは思えませんか?」
「まぁ、確かに・・・」
「ジューダスという人物がどんな人物なのか、誰も分かりません。ですが、相当に頭のいい人物だと私は感じています」
「・・・旦那がそこまで言うのは珍しいな」
「ですがそれと同時に、ジューダスはリアリストであるとも私は感じています」
「リアリスト?」
「現実主義者で不確実な要素は排除する、ジューダスからすれば私達はクイーンを助ける事が出来ないと判断したからルークと共に私達から離れたんですよ」
「・・・じゃあ、何でルークはジューダスと一緒にいるんですか?」
「それは分かりません。だから私達はルークに追い付く必要があるんです。ジューダスの目的は分かりませんが、少なくともルークの目的は謡将の計画を止める事なんですから」
「けど旦那、ルークの行くところにアテはあるのか?」
「カイツールです、どちらにせよ国境を越えなければ私達もルーク達も先に進めません・・・今日は休みましょう。明日から歩く速度を速めてカイツールに向かいます」
「しかし今から行けばルーク達に追い付けるかも・・・」
「私達だけならいいでしょう。しかしイオン様のお体の調子を考えなければいけません」
「あ・・・分かった・・・」
「あなたがルークに会いたい気持ちは分かります・・・焦らないで下さい」
そう言い残し、ジェイドは部屋の外へ出ていった。



「・・・皆さんがあなたを求めているんですよ」
ドアを閉めた後、ボソッと口に出す。彼は普段の態度を貫いているが、他の面々と同様にルークに会いたいと思って戻ってきた事に変わりはない。その表情には心なしか哀愁が漂っているように見えた。



一方そのころ、ルーク達はフーブラス川を抜けようとしていた。



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