救う者と救われるもの 第五話

ミュウも加え、タルタロスに戻ったティア達。ジェイドはタルタロスの入口で待機していた兵に指示をして、タルタロスの中の兵全員に外に出るように指示を出した。
「・・・大佐、さっき言った神託の盾襲撃の情報を掴んでたって本当なんですか?」
全兵がタルタロスの中から出てくるのを待っている最中、イオンに聞こえない程度に声量を落としてジェイドに尋ねるティア。
「あぁ、あれですか?嘘に決まってるじゃないですか」
すると即座に楽しそうな声で返事をジェイドは返した。
「大佐!?」
「仕方ないでしょう、理由無しに手紙の中身を私が肯定するのは無理があります・・・それにこれはルークの意思です」
「ルークが?」
「彼は私にタルタロスの兵の命を救う為にどうにか自分の言葉を聞いてくれと手紙に残したんですよ。そうは思いませんか?」
「・・・確かに」
手紙の中身を思い返せば理解出来る。執拗なまでに信じてくれと書いてあった、その書き方には命を想うルークの姿がティアの中で重なっていた。
「でも大佐ぁ~。どうしてルークはこんな手紙なんて方法で伝えてきたんですかぁ~?」
するとアニスがその会話に加わってきた。
「確かに・・・どうしてか大佐には検討はついていますか?」
今考えてみれば妙だとティアは感じた。タルタロスの兵を救いたいというならこの場に残って直接伝えればいい、しかし手紙というまだるっこしい方法をルークはとっている。それがアニスの言葉を受けて引っ掛かりになった。
「・・・考えられる要因は二つあります。ルークは私達が戻って来ている事を知らない、それがひとつ。そしてもうひとつが重要です。それは・・・ルークが私達との団体行動を拒んでいるという事です」
「「えっ!?」」
その言葉を受け、抑えていた声が危うく叫び声になりそうになった二人。しかしイオンに聞かれないようにと気を使っていたため、何とか声は抑えられたまま保たれていた。
「落ち着いて下さい、二人共。ルークがそういう行動をとるには訳があるんです」
「「訳?」」
「はい。これは私の推測ですが、ルークは未来を自らの手で変えるために自分から行動を起こしたんです・・・ちなみに私達が前にクイーンと相対した時にクイーンを助けるべきだとティアは考えていましたか?」
「私・・・私は・・・考えていませんでした」
「えぇ、そうです。私もそうでした。前の通りに行けば私達はルークの意思など関係無しにクイーンを倒す事を選択した。私達が戻って来ていると知らないルークはこのままでは前と同じになると考え、クイーンを死なせる前に行動しようと決心したんです」
「それで・・・ルークはティアを置いて行動したんですかぁ?」
「えぇ、恐らくは・・・ですが妙なんですよ」
「「妙?」」
「考えてみてください、私達の知るルークはこのように先に先にと単独行動をとるような性格でしたか?」
そのジェイドの言葉を受け、二人は少し考えた後、首を横に振り否定の意を示した。ルークの性格からはあまり想像出来ないのだ。
「これはまた推測なのですが・・・クイーンの所に単独で向かう事も、私に手紙を残していったのも今ルークと一緒にいる人物、ジューダスの指示ではないかと私は思っています」
「あっ・・・」
そう言われ、ティアはならば納得出来るかもと感嘆の声を上げた。
「ジューダスという人物が何者かは知りませんが、かなりの切れ者かと思われます。このような手紙を残して行くというのは私達から離れて先に行こうとしている事も裏付けています」
「ちょっと大佐!?」
「落ち着いて下さい、ティア。宿で置き手紙を見たでしょう?ルークはエンゲーブに戻ると明記してありました。だからエンゲーブでルークは待っている筈です」
そう言われてティアも安心する。ルークに会うために戻ってきたのに、肝心のルークに会えない。そのような事態だけはティアは避けたかった。
「それより今重要なのはルークの為にタルタロスの兵を無事に生き残らせる事・・・そうでしょう?」
「・・・そうですね!!」
不安は消え去った。ティアはジェイドの言葉に笑顔で答え、先に目の前の出来事に集中しようと決心した。




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