かつての全ては過去のもの

「そういうことだからスタン。後は気にしないで行ってらっしゃい、後はあたし達がやっておくからね」
「・・・うん、それはいいんだけどさ・・・流石に今日帰ってきたばかりでジューダスをすぐさま連れ回すのもどうかと思うし、旅仕度やお土産にチビ達に説明と色々しなきゃいけないこともあるからさ。俺は明日行こうかなって思ってるんだけど」
ルーティは話がまとまった所でさぁ出発と言わんばかりに二人を送り出そうとするが、スタンは頭をかきながら明日に出発するつもりだと言われる。
「あ、それもそうね。ジューダスも疲れてるだろうし、カイル達も帰ってきたばかり・・・うん、それがいいわね」
その案にルーティは独り言でウンウン言い終わると、カイル達に向き直る。
「って訳だけど、あんたらもそれでいいでしょ?」
「うん、大丈夫だよ!」
「はい、ルーティさん」
「問題はない」
「明日から頑張ります」
その案への賛同を求める声に四人とも同意で答える。その答えにルーティは笑顔を見せる。
「ならあんたらは今日は休みなさい。旅の疲れを取ることもだけど、明日からチビ達の相手をしてもらうんだからね!」
「うん、ありがとう母さん!」
そこからルーティはカイル達に休養を命じ、カイルも楽しそうに礼を言う。
「じゃあ俺は間借りしてるところに戻ります。パン屋にはスタンさん達が戻って来てから復帰しようと思うんで、その間は気にせず俺を使ってください。じゃあ失礼します」
「わかったわ、ロニ。じゃあまた明日ね」
「・・・っ」
その様子を見てロニが以前のアタモニ教団と違い、孤児院を出てから住んでいるという場所に戻ると言って孤児院から去っていく。
・・・その後ろ姿を見送りながら静かに、だが確かに複雑な思いをジューダスは自身で感じていた。












(居場所・・・いや、厳密に言えば住家、か)
そして夜。カイルの部屋にベッドを並べられ、そこで寝ることになったジューダスは暗い天井を仰ぎ見ながら昼間に感じた事について考えていた。
(ロニは間借りしていると言ったが、僕もどこか適当な部屋を借りるか?・・・いや、ダメだ。職につかずそのようなことをすればいずれは破綻をきたす・・・)
以前はアタモニ教団の兵士、エルレインの影響が無くなった今のロニは一介のパン屋。当然、店をやっている以上給金は出る。
だがジューダスは職についておらず、給金などもらえる立場ではない。今の手持ちの金も尽きてしまえばモンスターを倒す以外金を得る手段はない。ただそのように金目当てでモンスターを駆り続けるにも、いくらジューダスが手だれとは言え命を落とさない保証がない。それに歳を取れば活動限界はいずれ訪れる。
(・・・適当な職を探すしかないな。このままでは僕自身がダメに成り兼ねん上に、こいつらにいらん心配をかけてしまう・・・それに顔向けも出来ん、こいつらにもマリアンにも・・・!)
これからは自分の為にも周りで自らを気にかけてくれるカイル達の為にも、自身の新しい生活を見つけねばならない・・・その上、そのような自らが落ちぶれたに等しい情けない姿を見せたくない。自らが認めた人達の前では・・・
ジューダスは自分で出した結論に、元々高い自尊心に加えて決心という熱い火を投げ入れたよう、強く暗い天井を見据える。



「・・・ジューダス、まだ起きてる?」
「!・・・なんだ、カイル。起きていたのか?」
するとそんなジューダスの横から寝付きの良すぎるカイルからの確認の声が入る。一人の世界に入っていたジューダスは驚きながらもゆっくりカイルの方に振り向き、声色は冷静そうにつとめながら返す。するとそこには横向きながらも、カイルが真剣にこちらを見る顔があった。
「うん、ちょっと話したいことがあってさ・・・それで頑張って静かになるまで起きてたんだけど」
「・・・なんだ、言ってみろ」
実は寝ていなかった。寝れば一筋縄で起きる事はなくベッドに入れば即就寝のカイルからそう言われ、余程重大な事だと思いながらジューダスは先を促す。



「ジューダスが嫌じゃなかったらでいいけどさ、俺達と孤児院で一緒に働かない?」









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