かつての全ては過去のもの

・・・そう一人でどうするかジューダスが思考にふけっていると、少し重い雰囲気を醸し出すカイル達がやって来た。
(・・・わかりやすい奴らだ)
ジューダスとマリアンの関係とジューダスが実際にスタン達を裏切った理由をフィリアから聞いて、どういったものかと考えている。ジューダスは雰囲気からそうだろうなと察しながら、立ち上がる。
「・・・話は聞いたな、なら戻るぞクレスタに」
「うん・・・」
そして詳しく話を聞かれることを覚悟しながら帰還を口にするが、意外な事にカイルが複雑そうな返事を返して後ろを向いて足を運び三人ともに何も言わずにいた。
(・・・フィリアが何か言ったのか?)
その後をついていきながらも、ジューダスは適当にその理由に検討をつける。
(まぁ聞かれんなら聞かれんで構わん。同情を買う気など更々ないしな)
昔の自分ならいらん節介だとでも悪態をついていただろうが、今は素直にジューダスも感謝する。聞かれれば話す気はあるが、それでも裏切った動機は自分の心情的にもマリアンの為にも嬉々と話すような内容ではないと思っているのだから。












・・・そして場所は代わってクレスタ。イクシフォスラーに乗ってカイル達はこの街に戻ってきた。

ただその間、カイル達とジューダスの間でマリアンの事についての会話がされることはなかった。その話題を皆意図的に避けるよう・・・



「ただいま父さん、母さん!」
「おっ、カイル!帰ってきたか!」
「随分早かったわね、世界を回ってきたにしては」
「へへっ、イクシフォスラーをちょっとウッドロウさんに貸してもらったんだ!」
デュナミス孤児院に入り二人の姿を見つけたカイルは元気よく会話に入る。
「ウッドロウさんかぁ・・・元気だったか?」
「うん、フィリアさんもマリーさんもコングマンさんもジョニーさんも元気だったよ!あっ、それとリリス叔母さんとその子供のリムルが父さんに会いたがってたよ!」
「リリスかぁ・・・懐かしいなぁ・・・それにリムルちゃんか、会ってないなぁ俺・・・」
かつての仲間の話題から、妹とその姪。カイルから出て来た名前にスタンも懐かしむように顔を綻ばす。
「あんたもたまにはリーネに帰ったらどう?今ならカイル達の乗ってきたイクシフォスラーもあるんだから、たまには息抜きって意味でね」
「それはダメだろ、ルーティ以外にチビ達の面倒を見る奴がいなくなるから」
そんな様子を見たルーティが里帰りを提案するが、スタンはすぐさま子供の事を出して首を振る。
「別にあたしは構わないわよ?クレスタに来てからあんたほとんど遠出してないじゃない。それにたまにならあたし一人で十分よ」
「あっ、それなら俺が孤児院に残るよ!もう世界も見て回ったし、旅はしばらくいいかなって思ってるからさ!」
「俺も残りますよ、スタンさん。カイルが旅に出ないから俺が付いていく必要もないですし、たまにはリリスさん達に顔見せに行ってください!」
「そうですよ、それに迷惑でないなら私も孤児院をお手伝いしますし・・・」
そんなスタンにルーティを皮切りに、四人が自分がいるからと説得をする。
「うーん、それなら折角だし好意に甘えようかな?でも、リ・・・ジューダスはどうするんだ?ここにいるのか?」
スタンもその熱烈な説得に行こうかなと言い出すが、ここで発言をしていなかったジューダスに名前を間違えそうになりながらも視線を向けて質問をする。
「・・・イクシフォスラーの運転役は僕だ。無論カイル達もイクシフォスラーを動かせん事はないが、三人とも孤児院に残ると言ったからな。だから必然的にリーネに行くなら、僕がお前と行くことになる」
「そうなのか?だったら俺がジューダスに操縦方法を教えてもらって一人で行った方がいいんじゃないのか?ジューダスも旅をして疲れてるだろうし・・・」
「似合わん気を遣うな、スタン。それにお前に方法を教えて誤作動を起こし、イクシフォスラーを壊されでもされたらウッドロウに申し訳がたたんからな」
「うっ・・・それは・・・」
ジューダスから返ってきた共に行くという答えにスタンはこれが妥当だろうと案を出すが、その案を一蹴された上にウッドロウと出され答えに詰まる。
・・・まぁイクシフォスラーは飛行竜の操縦方法を知っていればその応用ですぐに運転出来るようになるのだが、スタンはそれを知らない。
「カイル達もお前を気遣って発言をしたんだ。今更僕一人の些細な事を気にするな」
「・・・ああ、わかった。イクシフォスラーを頼むよ、ジューダス」
ジューダスもそれをあえて言わず、スタンを気遣った。スタンはその心遣いに観念したように笑みを浮かべ、首を縦に振った。










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