かつての全ては過去のもの

だが・・・その笑みも、唐突な声の乱入で掻き消されてしまった。



「嘘・・・っ!?」
「・・・?」
笑んでいたジューダスの耳に突如入って来たのは動揺があまりにもわかりやすく聞いて取れる声。その声に何事かとジューダスは声の元を見ようと振り向く。
「・・・!!」
その時はっきりと見えたその姿に、今度はジューダスが驚きで目を剥き声を無くした。
「ねぇ、お母さん。どうしたの、この人を見て急にさ」
ジューダスとその存在、互いが互い顔を見合わせる中その存在の傍らにいた十歳程と思われる男の子が声をかける。母さん、と。
だがその存在は何も子供に答えず、ただハッキリとジューダスに向かって信じられないと声を上げた。



「エミリオ・・・!?」



・・・エミリオ。その名を知る者はジューダス以外には最早本人とスタン達、そしてただ一人だけしか存在しない。
「やはり、マリアンか・・・」
ジューダスはその名が出て来た事に間違いではなかったと、確信の言葉をボソリと口内で聞こえないよう相手に呟く。
・・・そう、ジューダスが相対した相手とはかつて至上の愛情を向けていたマリアンだった。十八年の時が経ってもマリアンだとはっきりわかるほど、昔からの面影を残した綺麗な彼女がメイド服ではない普通の服装でそこにいた。しかも彼女が産んだと思われる、彼女に似た雰囲気の子供を連れて。
「どうして、あなたが・・・!?」
「・・・」
そんな彼女は正しく亡霊を見るよう、信じられないとジューダスに詰める。が、ジューダスは横にいる子供を見てから覚悟を決めたように、改めてマリアンに向き合う。
「・・・話せば長くなる。どうしても僕の事が聞きたいというならその子供は出来れば外してほしい」
「!!・・・・・・わかったわ。ホラ、ちょっとお母さんはこの人とお話するからしばらく辺りで遊んでなさい」
「はぁい」
自分の事は話すが、他には知られたくない。ジューダスの声からエミリオだと改めて確信したことも併せてそれを察したマリアンは、子供に優しく笑顔で遊ぶようにお願いする。子供はその声に元気よく従い、その場から駆け出していく。
「・・・マリアン、あの子供は君の子供なんだな」
「・・・ええ、そうよ・・・隣、いい?」
「ああ」
その後ろ姿を見送るとマリアンは確認を取ってからジューダスの隣に座る、少し怖ず怖ずとしながら。
「・・・生きていたの、エミリオ?それにしても・・・貴方はあの時のまま・・・」
「・・・僕がここにいる経緯は今から僕が説明する、僕は本当の事しか言わないがそれを信じるか信じないかは君次第だ・・・」
そしてゆっくりとマリアンから確認の声が出されたが、やはり未だにジューダスの生存の事実を受け入れ難そうに言葉が不明瞭になる。それを聞いて真剣な声で前置きを置くとジューダスはゆっくりと語っていく、自らがどのような軌跡を辿って来たのかを・・・









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