かつての全ては過去のもの

「それより今度はどこに行くんだ!?ホープタウンには行ったし、後残ってる所って言ったらリーネにノイシュタット、アクアヴェイルくらいだろ!?」
ロニは必死にごまかすように、次の行き先をまくし立てていく。
「うーん、そうだなぁ・・・ホープタウンに近い所って言ったら、リーネか」
そのロニの言葉にカイルは別段つっこむ事もなく、考え込む。
「じゃあ次はリーネか」
「うん、そうしよう。それから次はノイシュタットかな、近いし」
「じゃあ行きましょう、リーネに」
ジューダスはカイルの声にリーネかと確認を取り、カイルはノイシュタットに行く事も合わせ肯定する。そしてリアラもリーネに行く事で合意したことで、話を逸らせた事にロニは一人ホッとしながら先を歩きだしたカイル達の後を追う。









・・・それからカイル達はイクシフォスラーでリーネに行き、リリスに会い親戚同士の交流をした。ただジューダスについての話は神の眼の騒乱に特にリリスが関わっていなかった事もあり、話される事はなかった。

そしてリーネで一泊すると次の目的地、ノイシュタットにカイル達は向かった・・・









「んー、久しぶりだなぁここも」
「特にあの時と比べて変わった感じはないな。まぁ当然だけど」
街の広場の中でカイルとロニは辺りを見渡しながらその雰囲気を懐かしむ。
「ノイシュタットに来たのはいいが、これからどうするんだ?」
「この街にはコングマンさんがいるだろ?俺はコングマンに会ってから、闘技場で戦おうと思ってるけど」
「コングマンか・・・」
そんなカイルにここに来た意味を問うが、コングマンという名にジューダスは人に聞かれないよう声量を落とす。
「拳の一発や二発は覚悟するか・・・」
「どうしたの、ジューダス?行こうよ」
「ああ、行こう」
前旅をしている時は別段コングマンに関わる事もなかったから顔も合わせなかったが、自分の顔を出せばコングマンの性格なら確実に昔の事で怒り自分を殴るだろう。
コングマンを知ってるジューダスはその予想が外れる事はないだろうと思いながら、先を行こうと促すカイルの声に内心で覚悟を決めながら闘技場へと歩いていく・・・









・・・そして数十分後、街の広場。
「・・・あの年でもあれだけの威力か、流石にチャンピオンだっただけのことはあるな」
ジューダスは一人噴水の前のベンチに座り、頬に手を当てながら佇んでいた。



・・・コングマンとの対面、そしてジューダスは久しぶりの顔合わせ。最初ジューダスを見てコングマンはすごく驚いていたが、事情を聞くと表情が見る見る内に一転。案の定、ジューダスはコングマンに一発拳を顔にぶち込まれた。ジューダスもそれが来ることは分かってはいたが、あえて避ける事もしなかった。その態度にコングマンは尚烈火の如く怒りを見せたがカイル達のなだめとジューダス本人から覚悟の上だったと聞き、不機嫌になりながらもそれ以上ジューダスに手をかけることもせず拳を引かせた。

そしてなんとか和解出来た後、闘技場で戦うといったカイル達とジューダスは別れて広場に戻ってきた。尚、流石に頬にアザを作ったままで外に出るのは少し・・・という事で、頬はロニのヒールで治療済みである。



「・・・変わらんな、どいつもこいつも」
殴られた後だというのに、ジューダスの顔に浮かんでいるのは自然な笑み。
・・・ジューダスはフィリア達に会いながら、年月が経ってもその心の根本が変わっていない事を確かに感じ取っていた。そしてジューダス自身は心の中でも恥ずかしさから言葉にしようとしないだろうが、こうも感じていた。仲間だと感じていたからこそ、昔と変わらず自分に接しているのだと。
「フッ、今の僕ではあの時と同じようにディストに言える気がせんな」
そこで思い出したのは、ネビリム復活を切に願っていたディストを説得した時の場面。
ジューダス自身も分かってはいる、自分の状況とネビリムの状況は違っていてあの時の自身の気持ちを込めた言葉を送ったのは間違いではないことを。
だが今の自分はどうも恵まれすぎている・・・オールドラントでの旅の事も併せ、自らの状況にジューダスは笑みがこぼれるのを禁じ得なかった。








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