かつての全ては過去のもの

「神の思し召しなどとは僕は信じんが、それでも縁という物は確かに存在すると思っている。事実僕はそうやって生き返った訳だからな、僕が望む望まないに関わらず」
「確かに・・・ルークさんの想いがなければ、ジューダスさんはこの場にはいませんでしたね・・・」
ジューダスの言葉に、姿を見たこともないルークにフィリアはしみじみと縁があったからと感じる。
「出会う時が来れば自然と出会える、僕はそう思うから無理に引き合わせようとする必要はない」
「・・・では、会えなかった場合は?」
「その時はその時だ、縁がなかったというところだろう。最も・・・会った所で彼女を悲しませない保障などどこにもないがな」
「・・・!」
だがフィリアはどこか会いたくなさそうな雰囲気を醸し出してると感じたのか、会えない場合を想定し質問する。だが返ってきた寂しそうな言葉にフィリアは言葉を止める・・・ジューダス自身もマリアンに会う事は怖いのだと、悲しませるのは嫌なのだと気付いてしまい。



・・・敬愛か情愛か親愛か、はたまたそれら全てを含んだ愛か。ジューダスがマリアンに抱いていた感情は大まかに言えば、そうだった。そしてその感情はシャルティエを除けば、マリアン以外に見せる事もほとんどなかった・・・その愛を向けていた、マリアンを悲しませてしまった・・・自らの判断に悔いはなかったとは言え・・・

・・・例え時が経ったと言っても、実際に会うのが怖いのは仕方ないと言ってもいいだろう。ジューダスとて人間だ。



・・・ただもちろん、会うべき時に会ったならジューダスは覚悟をするだろう。その気持ちすらも理解した為に、フィリアは再び口を開く。
「・・・わかりました。そう言われるのでしたら私はマリアンさんに連絡はしません。ただ、祈らせてください。貴方とマリアンさんが出会われたなら、二人に幸があるように・・・」
「・・・僕は戻らせてもらう・・・済まない、気を使わせたな」
目を閉じ手を組み祈る姿を見せたフィリアに、ジューダスは背を向け小さく別れと礼を言いその場から去っていく。
「・・・ジューダスさん・・・」
場から気配が消え去ったのを確認すると、フィリアはポーズを崩して目を開き悲しそうにジューダスの立ち去った方をジッと見る。
善意で言った事だったが、それが互いの幸せになりえることには=に繋がらない。そう思っただけにフィリアには本当に存在を引き合って会った時、互いが不幸にならないことを祈るしか出来なかった・・・









(マリアンは結婚した、か・・・あれだけの器量よしだ、放っておく方がどうにかしているな・・・)
フィリアの元からアイグレッテの宿に行き、食事を取って就寝の形になったカイル達。だがジューダスはマリアンという名前をフィリアから聞いた事で、ベッドの中で寝ずに考えにふけっていた。
(・・・昔の僕なら、マリアンが誰かと結婚するなどと聞いたら心穏やかには出来なかっただろうな・・・)
フィリアから出て来た、彼女の結婚の事実。『リオン・マグナス』だったころの自分を思い出し、その時に事実を聞いたなら子供のように不機嫌になることは間違いないとジューダスは思っていた。マリアンには大人ぶっておめでとうなどと言い、周りの人間には半ば八つ当たり同然の感情をぶつけているだろうと。
(・・・寝るか、明日には船に乗ってスノーフリアに向かうんだからな)
そこでかつての自分のガキ臭い姿を思い浮かべた事でジューダスは少し自己嫌悪に陥り、ごまかすように就寝しようと目を閉じる・・・その行為こそ子供っぽい行動だと考えないまま・・・









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