かつての全ては過去のもの

「・・・なんだ?」
「・・・これは話していい事かどうか悩みましたが、カイルさん達がいない今の内に言うべきだと思いましたのでお話したいと思います」
「・・・それはあいつらがいては話しにくい事なんだな?」
ジューダスの質問にフィリアは真剣な表情でコクりと頷く。
「宿の事を話したのは席を外させる為か?」
「・・・はい、ただすぐに二人きりになるとは思っていませんでしたが」
「・・・いいだろう、話してみろ」
先程の間がそういうものだと確認したことで、ジューダスもしっかり聞こうと表情を引き締める。
「・・・ジューダスさん、貴方は」



「マリアンさんに会うつもりはありますか?」



「!マリアン・・・っ!?」
だがその表情はフィリアから緊迫の様子でその名を聞いた事で、すぐに驚きによって崩れ落ちた。
「彼女の行方を、知っているのか・・・!お前は・・・!?」
その驚きのままジューダスはフィリアに問い掛け、彼女は苦々しく頷いて話し出す。
「マリアンさんは神の眼の騒乱の後、崩壊したダリルシェイドから当時のまだアイグレッテになっていないストレイライズ神殿に避難してきました。避難民の中からマリアンさんを見つけた私はしばらく彼女の身の上が落ち着くまで彼女を気にかけていました。そして彼女が働き口を見つけたと言ってからはあまりアイグレッテで彼女を見かけることはなくなったのですが、それから時々ですがマリアンさんは私の所に来るようになりました・・・エミリオの事を聞きたい、彼に懺悔したいとおっしゃりながら・・・」
「!」
フィリアのマリアンの痛みまで込めたように語っている話し口に、ジューダスは更に驚愕に染まった表情になる。
「・・・貴方が悩んで選んだ選択だということはわかります、マリアンさんを守る為だということも。ただ彼女はジューダスさんが自分を助ける為に命を投げ出した事を非常に嘆いていました。ルーティさんと話して強く生きようと思うようになったと言っていましたが、時々くじけそうになることがあったらしくその時は私の所に話を聞きに来る事で持ち直していた・・・とのことです。あの時から五年も経った頃にはマリアンさんは結婚をされましたし、心に整理をつけられたようで私の所に来る回数もめっきり減りましたが・・・」
「・・・そうさせてしまった原因は僕にある、ということか」
「・・・ジューダスさんの選択が間違いとは言いません。ただこうして戻って来られたのなら、マリアンさんに会う気はありませんか?私は彼女と今でも時々お話をしていますし、どこに住んでいるかも知っています。もしジューダスさんが望むなら彼女に連絡を取りますが・・・」
そこでフィリアの言葉が途切れ、ジューダスに返答を求める。
「・・・悪いが、必要はない」
「・・・どうしてですか?」
しかし返ってきた言葉は拒否。フィリアはその答えに静かに訳を問う。
「今こうやって僕はカイル達と世界を回っている、縁があればおそらく遠くない内に会えるだろう。無理に引き合わせようとしなくてもいい」
「・・・会う気はない、とは言わないんですね」
「・・・オールドラントに行く前だったらそう言っていただろうな」
ジューダスから返ってきた答えにフィリアは言葉のニュアンスが妙な事を聞くが、その声に自嘲気味に言葉を吐く。







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