救う者と救われるもの 第五話

ルーク達が今エンゲーブで書き置きを書いている事を知らないティア達はチーグルの森に丁度到着したところだった。
「ルークはここにいる・・・」
ティアがそっと呟き、眼に決意の光を灯す。
(待ってて、ルーク。今から行くから・・・)
ルークの事を想いながら森に入ると、入った瞬間、森の入口にこの時はいない筈の存在が既にいることに、イオンを除くメンバー全員が驚愕した。
「「「ミュウ!?」」」
常に冷静沈着というイメージを崩さないジェイドですらティア達と共に声を上げる。するとその声に気付いたミュウがひょこひょことこちらに近付いてきた。
「みゅみゅ?導師イオンさんですの?」
以前の旅と全く変わらないこの口調、確かにミュウだ。しかし何故ミュウがイオンの事をこの時点で知ってるのか、それがティア達の疑問になっていた。
「は、はい・・・そうですが・・・」
「みゅう~。あの赤い髪の人と黒い服を着た人の言った通りですの。ミュウは事情を説明するために長老から・・・」
「ちょっと待って下さい、ミュウ。今赤い髪の人と黒い服を着た人と言いましたね?」
イオンの確認をとったミュウがさらさらと話を進めつつあった流れを意図的に止めるジェイド。
「はい、そうですの。僕はその二人に頼まれてイオンさんに事情を説明してくれって頼まれたですの」
「僕に、ですか?」
「そうですの。チーグルが食糧を盗んでいた理由もその人達が全部解決してくれたですの。その人達が導師イオンが来るはずだから説明の手間を省くために入口で待ってて欲しいって言われてここで待ってたですの」
ミュウの言葉を受け、既にライガの件は片付いたのかと驚くティア達。それを受けて尚も質問を出そうとティアがミュウに詰め寄ろうとしていたが、
「では、ミュウ。話してくれませんか?」
とジェイドがティアを手で制しながら、ミュウに先を促した。
「大佐・・・」
「私達だけならばミュウから必要な情報だけを聞いてもいいでしょう。しかし、イオン様は何も知りません。イオン様をないがしろにして話を進めていいのですか?」
「あ・・・す、すみません・・・」
ミュウがイオンに説明している最中、小声で会話をするジェイドとティア。
「それに私達も事情を把握する必要があります。ルーク・・・それにジューダスという人物が何をしたのかということを・・・」
「はい・・・」
そういうとジェイドはミュウの方へと視線を向け、話を聞く体勢へと入った。
(私・・・焦ってるの?)
過去に戻ってきたのにルークに会えない、その気持ちがティアの余裕を奪っている。
(まだまだ未熟ね・・・)
時が経ち、多少なりにも人生経験を積んできた自分に少し自信を持っていた。しかしルークの事で周りが見えなくなっていた事で、自分はまだまだなのだとティアは実感していた。



ミュウの話も終わり、実情把握を終えたティア達。しかしあまりにも有り得ない事実にイオンも含めた全員、その事で戸惑っていた。
「チーグルの住みかに報告に来た時には既にライガは立ち退いた後・・・」
「その事からライガの言葉をルーク達は理解していた・・・」
「で、イオン様が来る事をみこしてミュウを入口に残していく気遣い・・・」
「・・・不思議な方達ですね」
上からジェイド、ティア、アニス、イオンの順である。
「・・・そうですの!!あの人達から預かっていた手紙があったですの!!」
すると今の状況整理の為、邪魔にならないようにと黙っていたミュウから思い出したかのように唐突に声を上げた。
「手紙、ですか?」
「そうですの!!青い服を着た人に渡して欲しいって頼まれたですの!!」
「私ですか?」
「はいですの!!」
元気よく声を出し、持っていた手紙をジェイドに渡そうとビョコッとジャンプするミュウ。するとジェイドはミュウを抱き上げ、手紙を取ると優しく地面に下ろした。おもむろに中身を取り出し、中に目を通す。手紙を読み終わるころには、ジェイドは瓢々とした表情を消して真面目そのものといった表情になっていた。その様子を見た三人がただ事ではないと察知する。



「すみません、イオン様。タルタロスに戻りましょう」




2/10ページ
スキ