救う者と救われるもの 第二十四話

「お礼なんかいいよ。それにこう言っちゃなんだけどさ、俺も嬉しいんだ。ジューダスともう一回会えた事がさ・・・それに、ルークにも会えてね」
「・・・え・・・なんで俺?」
だがありがとうという言葉から予想外なカイルの返答を聞き、ルークはキョトンとして目をパチクリと開く。
「俺さ・・・リアラと会ってここに戻って父さん達に話をする間にさ、昔の事色々思い出してたんだ。記憶が戻ってナナリーやハロルド、それにジューダスの事をね」
「・・・」
「ナナリーは多分今の俺達の時間だったら九歳くらいの姿でいると思うから会おうと思えば会える。ハロルドは千年前に生きてたから会えなくても仕方ないって思える。でもジューダスは・・・あの終わり方しかなかった」
「・・・」
ルークの脳裏に思い浮かぶのは神の命とも言えるレンズを砕いた後、摂理と満足を口にしカイルとロニの前から光と共に消えたジューダス。
「ジューダスにはもう会う事もない・・・けどそう思ってたら、偶然が重なった形じゃあるけどジューダスに会えた。さっき誰か怪しい人がいるんじゃないかって驚いたけど、実際に顔を見たらもっと驚いた・・・まさかジューダスなんて思わなかったしね」
「・・・はは・・・」
先程の対面の場面を思い出しながら話すカイルに、ルークは苦笑いを浮かべる。まさかあんな形で見つかるとは思ってはいなかっただけに、その状況に関してはルークも複雑な心境であった。
「その時ジューダスに会えて俺はすごく嬉しかった・・・そしてジューダスが何をしていたのかを聞いて、ルークと会えてよかったって思ったんだ。エルレインみたいに自分だけの幸せを皆に押し付けるような人じゃなくて、皆の事も考えられる人でよかったって」
「・・・そんな大したもんじゃないよ。俺はただ自分の生きたいってわがままで過去に戻ってしまったんだから」
「それでも、だよ。ルークは自分の気持ちを精一杯行動で示して、死ぬはずだった人達や色んな人の心を動かしたんだ。それに頑固だったジューダスの心も・・・そんなルークに会えた・・・俺はルークと知り合えただけでも、嬉しいよ」
「!・・・ありがとう、カイル・・・俺も、嬉しいよ」
遠慮がちに答えた声にまばゆいばかりの笑顔で最大の賛辞をカイルに送られ、ルークも思わずはにかんだ笑みを浮かべカイルに礼を言う。



・・・ここまで他意のない純粋な賛辞をルークは送られた事はない。純粋という意味ではフローリアンも負けてはいないが、重い想いがこもった言葉を言える程まだフローリアンは成熟していない。
それに自分達の行動で人が救われた光景を見てルークは満足感などを覚えたり感謝の言葉を送られたりはしたが、実際にここまで自らの事を行動から見て好評してくれた言葉をかけられたのは初めてでもあった。
カイルに対して喜色を隠せなかったのも、ルークとしては当たり前と言わざるを得ないという所だ。
(・・・なんか、救われた気がする・・・)
だからルークは初めてとも言えるその賛辞に、気持ちが軽くなったのを自覚していた。








21/23ページ
スキ