救う者と救われるもの 第二十四話

「迷ってるんだろ、ジューダスは?」
「・・・認めたくはないが、そうだ・・・」
今までにないジューダスの弱った肯定、ルークは気にせず続ける。
「俺さ、言ったじゃん。ジェイドにジューダスの生きる道はジューダス自身が決めるべきだってさ」
「・・・確かに、言ったな」
「スタンさんもさ、さっき言ったんだ。リオンの生きる道はリオンが決めるべきだって」
「!スタンも、だと・・・!?」
ジューダスの脳裏に浮かぶはケセドニアにてそう言うルークと、十八年振りに目の前にしたスタンの姿。
「でもジューダスは悩んでる・・・自分じゃ正直決められない程に・・・」
「・・・」
そしてなまじ自らの内心を当てられたことにジューダスは反論が出来ず、ジューダスを心配するようなルークの話を聞くばかり。
「・・・だからさ、俺はジューダスに悔いを残さないようにスタンさん達と話をして欲しいんだ。悩む程に残るかどうかを選ぶんなら、せめて色々心残りだって思ってる事を話し合って欲しいんだ・・・それで例えジューダス自身の辛い過去に触れる事になったとしても、こんな風に悩むくらいならそうした方が吹っ切るきっかけにはなると思うし・・・」
「・・・それがお前が心残りを出さないように今の内に話をした理由か」
「うん、だから俺は後悔しない。俺は俺の心を話した、それでジューダスが選択を選べるならそれでいい。それに・・・もしもの時、覚悟していないと今の俺じゃ泣き崩れそうだから・・・」
「!」
少し寂しそうに笑んだルークの顔を見てしまったジューダス。その表情を見てジューダスは瞬時にルークにある、寂漠の想いを掬い取ってしまっていた。



(ルークは僕がここに残ると言ったなら、それでいいと言う気はあるだろう。だがそれでもルークは僕との別れを確実に悲しむ・・・それを自分の内心で心を押し込めようとして・・・ルークは、それだけの覚悟をしている・・・!)
言葉とは裏腹に別れを惜しむ気持ちは溢れている。ジューダスはその顔が精一杯の虚勢が綻びた物だと理解したと同時に、自らの心にある考えが去来しているのを理解していた。
「・・・お前の言いたい事はわかった。僕も自らの考えを定める為に、スタン達と話をしたいと思う」
「それはホントか、ジューダス!?」
「ああ」
寂しそうになっていたルークにジューダスは自らの気持ちを素直に言葉に乗せ、勢いよく確認を取るルークに肯定で返す。
・・・そう、ジューダスの中に去来した考えはルークの案への賛同だった。もはやどちらを選ぶにしてもお人よしのルークやスタン達はろくでもない自分との別れを惜しむ。ならばせめてどちらを選ぶにせよ自分の意志で決めるため、過去と向き合う事にしたのだ。それが例えスタン達に、ルークに、そして自分にとって辛い事になるとしても・・・そう、ジューダスは考えていた。



「なら俺はここで待ってるから、ジューダスは下に行って来いよ。色々と話す事はあるだろうからさ。それで・・・全部話が終わって決意が出来たら、ここに戻って来てくれ・・・」
「・・・そうしよう」
その空気にホッとした様子でルークは話をしていたが、途端に空気を重く引き締めジューダスもその言葉に頷いて部屋の方へと戻っていく。
『・・・ジューダスと話す時間はもういいのか?』
「うん、俺は言いたい事は言ったから・・・後はスタンさん達の話が終わるまで待つよ・・・」
ジューダスがいなくなってすぐ声をかけてきたローレライに返事を返すと、ルークは遠くの方を見て無言になる。
(別れの時を決めた、か・・・あまりにも哀れだ。だがもうこれ以上時間を割けんのも事実、それにジューダスの身は一つ。致し方ない事とは言え・・・)
そんな様子にローレライは自身の内で、この状態を歎き心で言葉を無くす。
・・・そう。会話の中に二人の間に言葉に含んで交わした物、それは別れの時を決めた物だ。こればかりは先延ばしにいつまでもしていていいわけがない、いいわけがないのだがオールドラントに戻らなければならないルークが自ら決めたのだ。ローレライはこのことを悲しみはしても、否定する気は一切なかった。故に無言になる以外になかった、ルークの意志を尊重する以外になかったために下手な慰めの言葉もかけることもなく・・・








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