救う者と救われるもの 第二十四話

「・・・誰もいない」
「夜だから子供達は寝ているんだろう。だがこれは好都合だ、今の内に下の様子を確認するぞ」
「うん」
扉の先の通路には人の影はない。少し安心をしながらも二人は小声で会話をしながら、ゆっくりと階段の方に歩いて行く。
「・・・話し声?」
階段辺りに差し掛かって来た時、下の方から会話が聞こえてきた事でルークは足を止める。
「・・・もう少し近くで聞いてみるぞ・・・」
「うん・・・」
その声にジューダスは下から見えない角度の位置まで到着すると、ルークを誘導する。ルークもそれに従いジューダスの隣にゆっくり位置をつけると、耳に神経を集中させていく・・・



「・・・ハハハ!カイルもかけがえのないものを見つけて来たか!」
(スタン!?)
「それにしちゃ早過ぎじゃない?まっさか目と鼻の先のラグナ遺跡に行ったら、もう見つけて来たなんて・・・はぁ」
(ルーティも、いるのか・・・)
(ジューダス・・・)
すると、階下から聞こえてきた声は1番確かめたかったスタンとルーティの無事を確認させてくれる声だった。
その声が無事だという安堵を喜んだのか、二人の声に温もりを感じたのか・・・自然に出た微笑みの横顔を見て、ルークはジューダスにつられ笑んでしまう。
「こう言うのって遅いか早いかの違いだろ?それにカイル自身がかけがえのない人だってリアラちゃんを連れて来たんだ、俺はカイルを信じるさ!」
((リアラ!?))
だがルーティをなだめるような声のスタンの会話から、二人にとっても聞き捨てならない人名が聞こえてきた・・・はっきりとリアラ、と。
「ちょっとロニー・・・あんたもその場にいたんでしょー。せめてあたしにもわかるように二人の馴れ初めの瞬間を説明しなさいよー」
「いやちょっと、ルーティさん・・・詳しく説明したいのは山々なんですが・・・二人の出会いの時は何と言いますかそのー、俺はその場にいなかったんですが・・・」
「なーによ、つまんないわねー・・・」
(ロニもいるのか・・・だがラグナ遺跡でリアラと再び出会ったというのか、カイルは・・・?)
あまり面白くなさそうにロニに突っ掛かりしどろもどろな答えを返されたルーティが不満げな声をあげる中、ジューダスは出来る限り情報をまとめようと頭を回転させていく。
「・・・リアラちゃんって言ったわね?あなた、親のあたしが言うのはなんだけどカイルと一緒に生きる事に迷いはないの?」
「はい」
((リアラ・・・))
だが少しの間が空くと意を決したようなルーティの真剣な声が届き、一片の迷いもない肯定の声がリアラ本人の物だと二人に確信を持たせる。
「カイルに巡り会えた奇跡・・・この奇跡を私は手放したくありません、このことは私が強く望んだ物ですから・・・」
「・・・そう、そんなに真っすぐ言うならもう私は何も言わないわ。あなたもカイルもどうやら両思いのようだから」
「りょっ、両思い!?か、母さん止めてよ恥ずかしいよ!」
リアラの真剣な想いにルーティは観念したように声をあげるが、カイルが慌てた声をあげる。



「・・・なぁジューダス。どういうことなんだ・・・?」
あまりにも状況が飛躍して中身が掴めなくなったのか、下から聞こえて来るカイル達をからかうような声の中でルークはジューダスに極めて小さな声で話しかける。
「・・・リアラはなんらかの理由で再びこの世界に現れる事が出来て、ラグナ遺跡でカイルに出会えたようだな・・・詳しい経緯を知っているのはカイルだけだとは思うが、あいつに直接は聞けん。会話の様子からして間違いなくあいつはリアラと旅をした時の記憶を持ったカイルだ。ロニはどうだかはわからんが、今のあいつと僕が会ったら間違いなく面倒な事となる・・・」
その問いに深刻な声と表情でうつむきながら答えるジューダス。
「・・・ならジューダス。今の内にさっきの部屋に戻って、オールドラントに戻るのか?」
「・・・そうした方がいいだろう、今ならあいつらにばれずに戻れる」
その様子を見てルークは少し苦そうな顔をしながらジューダスに話し掛けるが、ジューダスはうつむいていたが為にその顔に気付かないまま立ち上がり階段の上の方を見る。
「・・・行くぞ、スタンの生存を確認できた今もうここにいる必要はない」
そう小声で言うと、ジューダスは振り返らずにゆっくり階段を上がっていく。










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