救う者と救われるもの 第二十四話

「デュナ、ミス孤児院、だと・・・?」
「うん、確かこの部屋はベランダに続く部屋だったと思うけど・・・」
デュナミス孤児院、つまりオールドラントとは違うジューダスの元々いた世界。ルークからそう告げられた事でジューダスは事実を確かめようと静かに、ゆっくりと辺りを改めて見渡していく。だがもう一度見渡す内に、ジューダスのこめかみ辺りから確かな汗が滴り落ち目を見開いていく。
「・・・間違いない、ここはデュナミス孤児院だ・・・だが何故、何故・・・!」
そして周りを見渡し終え、ルークの方を見たジューダスは呆然としたように事実を認めるが理由を教えてくれとすがるように近付いていく。
‘カッ’
「「うっ!」」
すると、二人の中心にいきなり光が出て来る。



『・・・無事だったか、二人とも』
「「・・・ローレライ・・・」」
その光により眩んだ視界が徐々に取り戻されつつある時、かかってきた声からローレライだと二人は確認する。
『いきなり二人が消えた時には驚いたが、こうやって無事を確認できてよかった。だが、ここは・・・』
「・・・言いたい事は分かるよ、ローレライ。俺達もどうしてこのデュナミス孤児院に来たのか、わからないんだ・・・」
『やはりそうか・・・』
しかしローレライもやはり何故このデュナミス孤児院に来たのか理解出来ないようで、ルークの説明に困った声を出す。
「・・・ローレライ、早く僕達をオールドラントに戻してくれ」
「ジューダス?」
するとジューダスがすぐさま戻してほしいと、ローレライに詰める。
「エルレイン、そしてフォルトゥナを倒した今ここに僕を覚えている者はいない。時代ははっきりはしてはいないが、内部の様子からカイル達と旅をした時とそれ程の時間差はないように思われる・・・今の内に戻ればまだ間に合う。カイルにロニだけならまだいい、だがスタンとルーティに僕は会う訳にはいかんのだ・・・!」
『ジューダス・・・』
その言葉に込められた強い意志と、ジューダスの過去を振り返りローレライは何も言えずに名だけを口にする。



・・・ジューダスはスタン達にも自身にも、相当な負い目を作ったと考えている。その上でジューダスとしてカイル達と旅をしていた時、かつての仲間と可能な限り顔を合わせる事を避けていた。それに今ここにいるだろうカイルとロニはジューダスとの旅の記憶があるわけがない。そう考えたら『ジューダス』を擁護出来る人間はルーク以外にいないが、流石にカイル達と旅をしていないルークではなし崩しに場の空気を作られてしまう可能性が出てしまう。

今この場にスタン達が来ない内にオールドラントに戻れば鉢合わせを避けられる・・・ジューダスの内心を考えると、ローレライはそうした方がいいと思えてならなかった。



「でも・・・ちょっと変じゃないか?」
「・・・変?何がだ?」
だがその空気にルークは疑問の声で割って入る。
「今、夜だろ?それでこの部屋は多分ルーティさんが使ってるんだろうけど、なんでルーティさんも誰もここにいないんだ?そもそも俺達、ここに誰かいたら多分ルーティさん達に見つかる形で逃げられなかったと思うんだけど・・・」
「・・・確かにそうだな。それに・・・スタンも生きているというなら、奴がここにいてもおかしくはないと思うが・・・」
辺りを見渡すジューダスも部屋にあるベッドにスタンがいないことで、ルークの疑問に同意する。
「・・・なぁ、ちょっとだけ下を見に行っていいか・・・?」
「下だと?」
するとルークは状況打開の明るい提案というより、怖い物を見に行くといったような提案をする。
「下にルーティさんにスタンさんがいればいいんだ、それで俺も孤児院の仕事をやってたんだって安心出来るし・・・大丈夫、ちょっと確認してくるだけだから・・・」
そのルークの声には多大な二人への心配が込められていた。もしまたバルバトスのような輩が現れていたなら・・・そう考えるのはやはり、前例があってのこと。ルークはジューダスの横を通って、部屋を出ようとする。
「待て・・・僕も行く」
「え?」
「お前一人行かせてヘマをしたらどうにもならん、どうせ30秒もしない程度だ。すぐに行って確認をすればそれで済む」
「・・・うん」
するとジューダスにその足を止められ、同行を申し出る。ルークはどうした方がいいのか分からず、複雑そうに頷く。
『我は指輪と同化しておこう、待機していて子供に見つかったらややこしくなるからな』
そしてローレライもルークの元に行き、すかさず指輪と同化する。
「では行くぞ」
「うん」
それを確認し終えると、ジューダスが小声で部屋を出ようといいルークも小声で頷くと、扉の前に行き慎重にルークは扉を開ける。









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