救う者と救われるもの 第二十四話

自らの名を必死に呼びながら、自らの元にローレライの鍵を右手に走り出すルーク。その事実にジューダスは何故そのようなことをするのかとその走り出した一瞬で思った・・・が、一秒にも満たない次に訪れた瞬間でその理由をジューダスは知った。
「なっ!?」
(これは、時空移動の光だと!?)
視界に現れたのはまばゆいばかりの光、しかもジューダスには何度も見覚えのありすぎる時空移動の光。驚きに満ちたジューダスは声を上げるだけしか出来ずに、光に包まれる・・・その右手に暖かい温もりを感じながら。



・・・ルークは目を開けた時、ハッキリとジューダスの背後に広がりだすその光を目撃していた。
(あれは、どうして・・・!?)
その光に驚きで呆然となりかけていた思考だったが、それでもルークは徐々に大きく広がりつつ・・・ジューダスを飲み込まんとする、光を放っておけなかった。その光が何のために発生したのかがわからないからこそ、このままジューダスがいなくなるかもしれないという事を恐れた為に。



そして気付けばルークは走り、光の中に消えかけていたジューダスの元にたどり着きその右手を掴むと・・・ルークも共に光に包まれた。
「「「「ルーク!?」」」」
だがそれはあまりにも一瞬の出来事過ぎた。誰もがルークの行動に反応が一歩遅れ、二人が光に包まれた時にようやくその名を呼び全員が光に集まろうとした・・・だが、
‘カッ’
「「「「うっ!」」」」
二人を包んだ光は収縮を遂げ・・・辺りから消えた、二人と共に。



「・・・う、嘘・・・ルークが、ジューダスがいないよ・・・」
眩んだ目も普通に見える程回復し、辺りを見回して二人がいなくなった事をフローリアンがうろたえながら口にする。
「た、確かにいない・・・どこに行ったんだ、二人は・・・」
「あの光が突然発生したと思ったら、いきなり・・・なんなんですの!?」
「あれは時空移動の光・・・ですが何故いきなり・・・!?」
ガイ・ナタリア・ジェイドと動揺するフローリアンに続く。だが三人も動揺を隠せず、ジェイドに到っても周りをキョロキョロと見渡す様子から余程今の状況が信じられずにいるのがわかる。
そして周りも四人と同じよう動揺しながら辺りを見渡していたが一人、アッシュだけはそこから中央に漂っていたローレライに勢いよく問う。
「おい、ローレライ!これはどういうことだ!ルークとジューダスはどこに行ったのかわからないのか!?」
答えろではなく答えてくれと言ってるような嘆願に近い。だが藁にも縋る気持ちは一同同じのようで、ローレライに一斉に視線を向ける。
『・・・恐らくではあるが、何者かの意志がジューダスを連れていこうとしていたように思われる』
「思われる?随分と曖昧な言い方ではないか、ローレライ?」
『・・・あの時空移動には強い力が感じられなかったのだ、それも本来なら時空移動を起こせるのかも怪しい力だ。少なくともエルレインのように時空移動をたやすく行える者のやったものとは思えんが、だからこそ理解が出来ん・・・誰がジューダスを・・・』
ローレライの予測にヴァンが口を挟むが返ってきた苦悩の様子を感じさせる声は、一同が事の深刻さを実感するには十分だった。
『・・・とにかく、我は二人を追おうと思う』
「!?追えるのか、ローレライ!?」
『今ならまだ鍵に込められた膨大な第七音素を手掛かりに二人の行方を辿って時空間を追える。だが行くのは我だけだ、二人の人間を連れて帰るにはこれ以上連れていく事は出来ん』
「・・・わかった。頼む、行ってくれローレライ!」
しかしその重大事にローレライは光明を見せる。アッシュは条件付きだが二人を追えると聞き、口惜しそうにしながらも勢いよくローレライにまっすぐ頼む。
『ああ、行ってくる』
そのアッシュの声に同調するよう一同の目がローレライを集中する中で、ローレライは自身の力で光に包まれる。



・・・そしてその場に残されたのはローレライの帰還を期待して待つ一同と、月夜の明かりを受けて白く存在感を足元で示すセレニアの花達だった・・・









7/23ページ
スキ